智囊 / 得情・王佐
王佐守平江,政聲第一,尤長聽訟。小民告捕進士鄭安國酒。佐問之,鄭曰:「非不知冒刑憲,老母飲藥,必酒之無灰者。」佐憐其孝,放去,復問:「酒藏牀腳笈中,告者何以知之,豈有出入而家者乎?抑而奴婢有出入者乎?」以幼婢對,追至前得與民奸狀,皆仗脊遣,聞者稱快。
新字:王佐守平江,政声第一,尤長聴訟。小民告捕進士鄭安国酒。佐問之,鄭曰:「非不知冒刑憲,老母飲薬,必酒之無灰者。」佐憐其孝,放去,復問:「酒蔵牀脚笈中,告者何以知之,豈有出入而家者乎?抑而奴婢有出入者乎?」以幼婢対,追至前得与民奸状,皆仗脊遣,聞者称快。
書き下し
王佐、平江を守り、政声第一にして、尤も聴訟に長ず。小民、進士鄭安国が酒を捕らうと告ぐ。佐之を問う。鄭曰く、「刑憲を冒すを知らざるに非ず。老母薬を飲むに、必ず酒の灰無き者を須う」と。佐其の孝を憐れみ、放ち去らしむ。復た問う、「酒は牀脚の笈中に蔵せり。告者は何を以て之を知るや。豈に出入りして家に在る者有るか。抑も汝の奴婢に出入りする者有るか」と。幼婢を以て対う。追して前に至らしむるに、民と奸する状を得たり。皆な脊を仗して遣わす。聞く者は快と称す。
現代語訳
王佐は平江を治め、政治の評判は第一で、とりわけ訴訟の裁きに優れていた。一般の民が、進士の鄭安国が酒を密造していると訴え出た。王佐が鄭に問いただすと、鄭は言った。「法を犯すことは承知しております。しかし老いた母が薬を飲むのに、どうしても灰を入れていない酒が要るのです」と。王佐はその孝心を憐れんで放免した。そして改めて問うた。「酒は寝台の脚もとの竹箱にしまってあった。告発者はなぜそれを知ったのか。家に出入りする者がいるのか。それとも、お前の召使いで出入りする者がいるのか」と。鄭は幼い下女がいると答えた。その下女を呼び出して尋ねると、訴えた民と密通していた事情が分かった。二人とも背中を杖で打って帰した。聞いた人々は痛快だと称えた。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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言志四録・言志録 第百十四条 孝子を賞するの道近代孝子を賞するに、金帛粟米を賜ひて以て之を旌す。頽俗を風励するの意に於ては則ち得たり。但だ其の之を賞するは、当に諸を孝子の心に原ぬべくして可なり。孝子の心は、親を愛するの外に他念無し。其の身の艱苦すら、且つ甘んじて之を受く。況んや敢へて名を求めんや。故に金帛粟米の賜は、宜しく其の親に厚くして其の子に薄くすべし。蓋し其の子に薄くするに非ず。其の親に厚くする所以の者は、即ち其の子に厚くする所以なり。親を賞するの辞に曰く、「庭訓素有り」と。子を賞するの辞に曰く、「能く庭訓に従ふ」と。此くの如くんば則ち孝子の素願足れり。
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『翁問答』下卷之末之末体充曰、さやうに候はゞ、今時の物よみ坊主衆のかみをそりて出家のまねをめさるゝも、道理にかなひたる事にて候や。師の曰、俗儒の作法は無案内なれば、何とも了簡に及がたし、定て日本にての俗儒は、かみをそらではかなはぬ子細ありての事ならんか、真儒の道にて論ずれば、中庸の神理にだにかなひぬれば、かみをそりても苦しからず、泰伯は孝行の為に髪を断身を文にしたまひたり、しかるを孔子、泰伯は其れ至徳と謂ふべきのみと嘆美したまふかみをたち身を文にしたまふをほめたまふにあらず、
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『徂徠先生答問書』卷中一孝行の儀御尋に候。成程聖人の教には孝弟忠信を中庸の徳行と名付け、是を貴賤によらず人たる者の勤め行ふべき事といたし申候。君子の道も、是を土台にいたし不申候得ば、高きにのぼるに楷梯なきがごとくに御座候。舜の契を司徒の官になされ、五倫を教へしめ給ふも、孔子の民に中庸の徳なき事を御なげき被成候も同意にて御座候。孝は父母によくつかへ候事、弟は兄長によくつかへ候事、忠は君につかゆるにても、又たれにても、人のためになし候事をば我身の事のごとくに如在なく身にかけ申候事に候。信と申候は、朋友其外あまねくの人にまじはり申候には言語を慎み偽り違候事なきやうに致し候を申候。是にて父母兄弟君臣朋友の道こもり申候故、五倫と申候も、中庸と申候も、孝弟忠信と申候も、ひとつ事にて御座候。
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尚書・君陳王若(かく)のごとく曰く、「君陳よ、惟れ爾令徳にして孝恭なり。惟れ孝にして、兄弟に友に、克く有政に施す。汝に命じて茲の東郊を尹(をさ)めしむ、敬せよや。昔周公万民を師保し、民其の徳を懐く。往きて乃の司を慎み、茲に厥の常に率へ。懋めて周公の訓を昭らかにせば、惟れ民其れ乂まらん。我聞く、曰く、
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論語・為政篇孟武伯孝を問う。子曰く、「父母は唯其の疾(やまい)を之憂う。」
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『翁問答』上卷之本体充問曰庶人の孝行はいかゞ。師の曰農工商何れも其所作を能勤め怠らず財穀を貯へ、むざと費やさず身持心立能慎み、公儀を恐れて法度に背かず、我身子の事をば第二とし、父母の衣服食物を第一に思ひ入、心力を尽して及ぬきはをも調へて父母の受悦ぶ様にもてなして能く養ふは庶人の孝なり。体充問曰五等の孝の内、只庶人に計り父母を養ふと説給ふは、如何なる故にて候や。師の曰士より上は財乏しからず養ふ事は云ふに及はず、庶人は財乏しくして、充分に心を苦しめ力を尽さゞれば、衣服食物足らざる故に、庶人に計り養ひを説給ふ五等皆其位の内にて第一重き所を取りて、説給ふ道理は皆相通するなり、能く体認すべし。
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