智囊 / 得情・尹見心
民有利姪之富者,醉而拉殺之於家。其長男與妻相惡,欲借奸名並除之,乃操刃入室,斬婦首,並取拉殺者之首以報官。時知縣尹見心方於二十里外迎上官,聞報時夜已三鼓。見心從燈下視其首,一首皮肉上縮,一首不然,即詰之曰:「兩人是一時殺否?」答曰:「然。」曰:「婦有子女乎?」曰:「有一女方數歲。」見心曰:「汝且寄獄,俟旦鞫之。」別發一票,速取某女來,女至,則攜入衙,以果食之,好言細問,竟得其情,父子服罪。
新字:民有利姪之富者,酔而拉殺之於家。其長男与妻相悪,欲借奸名並除之,乃操刃入室,斬婦首,並取拉殺者之首以報官。時知県尹見心方於二十里外迎上官,聞報時夜已三鼓。見心従灯下視其首,一首皮肉上縮,一首不然,即詰之曰:「両人是一時殺否?」答曰:「然。」曰:「婦有子女乎?」曰:「有一女方数歳。」見心曰:「汝且寄獄,俟旦鞫之。」別発一票,速取某女来,女至,則攜入衙,以果食之,好言細問,竟得其情,父子服罪。
書き下し
民に姪の富を利する者有り。醉いて之を家に拉殺す。其の長男は妻と相悪み、奸名を借りて並せて除かんと欲す。乃ち刃を操りて室に入り、婦の首を斬り、並せて拉殺されし者の首を取りて以て官に報ず。時に知県尹見心は方に二十里外にて上官を迎え、報を聞きし時、夜已に三鼓なり。見心は灯下より其の首を視るに、一首は皮肉上に縮み、一首は然らず。即ち之を詰して曰く、「両人は是れ一時に殺せしか」と。答えて曰く、「然り」と。曰く、「婦に子女有りや」と。曰く、「一女有り、方に数歳なり」と。見心曰く、「汝は且く獄に寄せ、旦を俟ちて之を鞫せん」と。別に一票を発して、速やかに某の女を取らしむ。女至れば、則ち携えて衙に入り、果を以て之に食わせ、好言して細かく問い、竟に其の情を得て、父子罪に服す。
現代語訳
姪の財産を狙う男がいて、酔ったうえで姪を自宅で絞め殺した。その長男は妻と仲が悪く、姦通の名目を借りて、妻と殺された姪を一度に始末しようとした。刃物を持って部屋に入り、妻の首を斬り、絞め殺された者の首も取って役所に届け出た。そのとき知県の尹見心は、二十里離れた場所で上官を迎えていた。報せを聞いたのは、すでに夜の三更だった。尹見心は灯りのもとでその首を見た。一つの首は皮肉が上に縮んでいるが、もう一つはそうではない。すぐ問いただした。「二人は同じ時刻に殺したのか」と。答えた。「そうです」と。尋ねた。「妻に子はあるか」と。答えた。「娘が一人、まだ数歳です」と。尹見心は言った。「お前はひとまず牢に入れておく。夜が明けてから取り調べる」と。別に一枚の召喚状を出して、その娘をすぐに連れて来させた。娘が着くと、役所の奥へ連れ入れ、果物を食べさせ、やさしく言葉をかけながら細かく問いただし、ついに真相が分かった。父子は罪を認めた。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
司馬法・仁本その老幼を見ては、奉(ほう)じて帰し、傷つくる勿(な)かれ。壮者に遇うと雖も、校(きそ)わざれば敵とする勿れ。
-
『大和俗訓』巻之五・言語一凡人のいみきらふこと、言ふべからず。人の生れつき、不具かたはなる者あり。又其行さきに大なる過ありしものあり。或は親先祖いやしかりしものあり。此たぐひ、言ひいだせば、聞く人きらひて、うらみ怒る。是世俗のいはゆるさしあひなり。心を用ひて言ふべからず。
-
説苑・雜言孔子将に行かんとするに、蓋無し。弟子曰く、「子夏に蓋有り、以て行く可し」と。孔子曰く、「商の人と為りや、甚だ財に短し。吾聞く、人と交わる者は、其の長ずる所を推し、其の短なる所を違く、故に能く久長なりと」と。
-
論語・衛霊公篇師冕見ゆ。階に及べば、子曰く、「階なり。」席に及べば、子曰く、「席なり。」皆坐すれば、子之に告げて曰く、「某は斯に在り、某は斯に在り。」師冕出づ。子張問いて曰く、「師と言うの道か。」子曰く、「然り、固より師を相くるの道なり。」
-
『呻吟語』内篇・應務・其の跡を泯す其の私を恤へ、其の願ひを濟し、其の名を成し、其の跡を泯すは、體悉の至りなり。人を感ぜしむること心骨に淪む。故に言を察し色を觀るは、學の粗なり。情に達し意を會するは、學の精なり。
-
『呻吟語』内篇・應務・失意の人に對して矜る勿かれ憂ふる人に對して樂しむ勿かれ、哭する人に對して笑ふ勿かれ、失意の人に對して矜る勿かれ。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る