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智囊 / 經務・陳霽岩

陳霽岩知開州,時萬曆己巳,大水,無蠲而有賑,府下有司議,公倡議:極貧谷一石,次貧五斗,務沾實惠。放賑時編號執旗,魚貫而進,雖萬人無敢嘩者。公自坐倉門小棚,執筆點名,視其衣服容貌,於極貧者暗記之。庚午春,上司行牒再賑極貧者,書吏稟出示另報,公曰:「不必也!」第出前點名冊中暗記極貧者,徑開喚領,鄉民咸以為神,蓋前領賑時不暇妝點,盡見真態故也。

新字:陳霽岩知開州,時万暦己巳,大水,無蠲而有賑,府下有司議,公倡議:極貧谷一石,次貧五斗,務沾実恵。放賑時編号執旗,魚貫而進,雖万人無敢嘩者。公自坐倉門小棚,執筆点名,視其衣服容貌,於極貧者暗記之。庚午春,上司行牒再賑極貧者,書吏稟出示另報,公曰:「不必也!」第出前点名冊中暗記極貧者,径開喚領,郷民咸以為神,蓋前領賑時不暇妝点,尽見真態故也。

書き下し

陳霽岩、開州を知す。時に万暦己巳、大水あり。蠲く無くして賑有り。府下の有司議し、公倡議す、「極貧は穀一石、次貧は五斗、務めて実恵に沾わしめよ」と。放賑の時、号を編み旗を執り、魚貫して進み、万人と雖も敢えて嘩する者無し。公は自ら倉門の小棚に坐し、筆を執りて名を点じ、其の衣服容貌を視、極貧の者は之を暗記す。庚午の春、上司牒を行いて再び極貧の者を賑わす。書吏稟して出示して別に報ぜんとす。公曰く、「必ずしも然らず」と。第だ前の点名冊中の暗記せる極貧の者を出し、径ちに開喚して領せしむ。郷民咸な以て神と為す。蓋し前に賑を領する時、妝点するに暇あらず、尽く真態を見るが故なり。

現代語訳

陳霽岩が開州の長官であった。万暦己巳の年、大洪水があり、租税の免除はなく救済だけがあった。府の役人たちが協議し、公は提案した。「極めて貧しい者には穀物一石、次に貧しい者には五斗を与え、必ず実際の恩恵が行き届くようにせよ」。配給の時には、番号をつけて旗を持たせ、魚を連ねるように列を作って進ませたので、万人いても騒ぐ者はいなかった。公は自ら倉の門の小さな屋根の下に座り、筆を執って名前を点呼し、衣服や容貌を見て、極貧の者を暗記した。庚午の春、上司が通達を出して、再び極貧者を救済することになった。書記が、新しく告示して別に申告させたいと申し出た。公は言った。「その必要はない」。ただ先の点呼名簿の中で暗記しておいた極貧者を取り出し、すぐ呼び出して受け取らせた。郷の民は皆、神のようだと言った。それは最初に救済を受ける時には、装う暇がなく、ありのままの姿を見たからである。

解説

陳霽岩は、救済の最初の配給の場で、衣服や顔つきを見ながら本当に困窮している人を記憶しておきました。次の救済の時には、あらためて申告させずに、その記憶と名簿から対象者を呼び出しています。申告制にすると、見栄えを整えた人や口の立つ人が有利になり、本当に困っている人が漏れるからです。現代の支援制度や社内の評価でも、申告された情報だけでなく、取り繕う余裕のない場面での様子を観察すると、実態に近づけます。観察の記録を残すことが、後の公平な判断を支えます。

この章句が説くこと

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