智囊 / 億中・李泌・李絳
既而田懷諫幼弱,軍政皆決於家僮蔣士則,以愛憎移易諸將,眾皆憤怒。田興晨入府,士卒數千人大噪,環興而拜,請為留後,興驚仆地,久之,度不免,乃謂眾曰:「汝肯聽吾言乎?勿犯副大使,守朝廷法令,申版籍,請官吏,然後可。」皆曰:「諾。」興乃殺蔣士則等十餘人,遷懷諫於外。冬十月,魏博監軍以狀聞。上亟詔宰相,謂李絳曰:「卿揣魏博若符契。」李吉甫請遣中使宣慰以觀其變,李絳曰:「不可,今田興奉其土地兵眾,坐待詔命,不乘此際推心撫納,結以大恩,必待敕使至彼,待將士表來為請節鉞,然後與之,則是恩出於下,非出於上,將士為重,朝廷為輕矣。」上乃以興為魏博節度使。
新字:既而田懐諫幼弱,軍政皆決於家僮蒋士則,以愛憎移易諸将,衆皆憤怒。田興晨入府,士卒数千人大噪,環興而拝,請為留後,興驚仆地,久之,度不免,乃謂衆曰:「汝肯聴吾言乎?勿犯副大使,守朝廷法令,申版籍,請官吏,然後可。」皆曰:「諾。」興乃殺蒋士則等十余人,遷懐諫於外。冬十月,魏博監軍以状聞。上亟詔宰相,謂李絳曰:「卿揣魏博若符契。」李吉甫請遣中使宣慰以観其変,李絳曰:「不可,今田興奉其土地兵衆,坐待詔命,不乗此際推心撫納,結以大恩,必待勅使至彼,待将士表来為請節鉞,然後与之,則是恩出於下,非出於上,将士為重,朝廷為軽矣。」上乃以興為魏博節度使。
書き下し
既にして田懐諫は幼弱にして、軍政は皆家僮蔣士則に決し、愛憎を以て諸将を移易す。衆皆憤怒す。田興、晨に府に入るに、士卒数千人大いに噪ぎ、興を環りて拝し、請いて留後と為す。興驚きて地に仆れ、久しくして、免れざるを度り、乃ち衆に謂いて曰く、「汝ら肯えて吾が言を聴くか。副大使を犯すこと勿かれ、朝廷の法令を守り、版籍を申べ、官吏を請え、然る後に可なり」と。皆曰く、「諾」と。興乃ち蔣士則ら十餘人を殺し、懐諫を外に遷す。冬十月、魏博の監軍、状を以て聞す。上、亟かに宰相に詔し、李絳に謂いて曰く、「卿の魏博を揣ること符契の若し」と。李吉甫、中使を遣わして宣慰して以て其の変を観んことを請う。李絳曰く、「不可なり。今、田興は其の土地兵衆を奉じ、坐して詔命を待つ。此の際に乗じて心を推して撫納し、結ぶに大恩を以てせず、必ず敕使の彼に至り、将士の表を待ちて為に節鉞を請うを来らしめ、然る後に之を与えば、則ち是れ恩は下より出で、上より出でず、将士は重く、朝廷は軽くなる」と。上乃ち興を以て魏博節度使と為す。
現代語訳
やがて田懐諫は幼く弱いので、軍政はすべて家僕の蔣士則が決め、好き嫌いで諸将を入れ替えた。皆が憤り怒った。田興が朝に役所に入ると、兵士数千人が大いに騒ぎ、興を取り囲んで拝礼し、留後になってほしいと請うた。興は驚いて地に倒れ、しばらくして、逃れられないと悟り、そこで皆に言った。「お前たちは私の言うことを聞くか。副大使を傷つけてはならない。朝廷の法令を守り、戸籍を差し出し、官吏の派遣を請うこと。そうしてはじめて受けよう」。皆は「承知しました」と言った。興はそこで蔣士則ら十余人を殺し、懐諫を外に移した。冬十月、魏博の監軍が状況を報告した。皇帝はただちに宰相に詔を下し、李絳に言った。「卿の魏博に対する見通しは割り符が合うように的中した」。李吉甫は宦官の使者を送って慰撫して変化を見たいと請うた。李絳は言った。「いけません。今、田興は土地と兵を差し出して、座して詔命を待っています。この機会に心を尽くして受け入れ、大きな恩で結ばず、使者が行き、将士からの上表を待って節鉞を請うてから与えれば、恩は下から出たことになり上からではなくなり、将士が重く、朝廷が軽くなります」。皇帝はそこで田興を魏博節度使に任じた。
解説
この章句が説くこと
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