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智囊 / 知微・朱仙鎮書生

朱仙鎮之敗,兀術欲棄汴而去。有書生叩馬曰:「太子毋走,岳少保且退。」兀術曰:「岳少保以五百騎破吾十萬,京城日夜望其來,何謂可守?」生曰:「自古未有權臣在內,而大將能立功於外者,岳少保且不免,況成功乎?」兀術悟,遂留。〔馮述評〕以此書生而為兀術用,亦賦檜驅之也。

新字:朱仙鎮之敗,兀術欲棄汴而去。有書生叩馬曰:「太子毋走,岳少保且退。」兀術曰:「岳少保以五百騎破吾十万,京城日夜望其来,何謂可守?」生曰:「自古未有権臣在内,而大将能立功於外者,岳少保且不免,況成功乎?」兀術悟,遂留。〔馮述評〕以此書生而為兀術用,亦賦檜駆之也。

書き下し

朱仙鎮の敗れに、兀朮、汴を棄てて去らんと欲す。書生有りて馬を叩きて曰く、「太子、走ること毋かれ。岳少保は且に退かんとす。」兀朮曰く、「岳少保は五百騎を以て吾が十万を破る。京城日夜其の来たるを望む。何ぞ守るべしと謂うや。」生曰く、「古より未だ権臣内に在りて、大将能く功を外に立つる者有らず。岳少保すら且つ免れず、況んや成功をや。」兀朮悟り、遂に留まる。〔馮述評〕此の書生を以て兀朮の用と為すは、亦た秦檜の之を駆るなり。

現代語訳

朱仙鎮での敗戦のあと、金の兀朮は汴京を捨てて立ち去ろうとした。一人の書生が馬の轡を叩いて言った。「太子、逃げてはなりません。岳少保(岳飛)はまもなく退きます。」兀朮は言った。「岳少保は五百騎で我が十万を破った。京城の人々は日夜その到来を待ち望んでいる。どうして守れると言うのか。」書生は言った。「昔から、権勢のある臣下が内に居て、大将が外で功を立てられた例はありません。岳少保でさえ無事では済みません。まして成功などできましょうか。」兀朮は悟って、そのまま留まった。〔馮夢龍の評〕この書生が兀朮の役に立つようになったのは、秦檜が駆り立てたからでもある。

解説

前線の将が勝っていても、後方で足を引く権臣がいる限り、最後は勝てない。この書生は、敵の内部事情から岳飛が退くと読み切りました。戦場の優劣より、組織の力学が結果を決めるという視点です。会社でも、現場が成果を出していながら、経営中枢の不信や政治的な妨害で潰される事例は珍しくありません。馮夢龍は、書生が敵側に役立ったのは秦檜のせいだと皮肉ります。自分の勢力が弱ったように見えるとき、内部の不協和が敵に利用されていないか、現場を支える後ろ盾が機能しているかを点検する視点を与えてくれます。

この章句が説くこと

叩馬岳少保且退権臣在内大将立功於外組織力学内部分裂

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