智囊 / 知微・魏先生
隋末兵興,魏先生隱梁、宋間。楊玄感戰敗,謀主李密亡命雁門,變姓名教授,與先生往來。先生因戲之曰:「觀吾子氣沮而目亂,心搖而語偷,今方捕蒲山黨,得非長者乎?」李公驚起,捉先生手曰:「既能知我,豈不能救我與?」先生曰:「吾子無帝王規模,非將帥才略,乃亂世之雄杰耳。」因極陳帝王將帥與亂世雄杰所以興廢成敗,曰:「吾嘗望氣,汾晉有聖人生,能往事之,富貴可取。」李公拂衣而言曰:「豎儒不足與計。」事後脫身西走,所在收兵,終見敗覆,降唐復叛,竟以誅夷。〔馮述評〕魏先生高人,更勝嚴子陵一籌。
新字:隋末兵興,魏先生隠梁、宋間。楊玄感戦敗,謀主李密亡命雁門,変姓名教授,与先生往来。先生因戯之曰:「観吾子気沮而目乱,心揺而語偸,今方捕蒲山党,得非長者乎?」李公驚起,捉先生手曰:「既能知我,豈不能救我与?」先生曰:「吾子無帝王規模,非将帥才略,乃乱世之雄杰耳。」因極陳帝王将帥与乱世雄杰所以興廃成敗,曰:「吾嘗望気,汾晋有聖人生,能往事之,富貴可取。」李公払衣而言曰:「豎儒不足与計。」事後脱身西走,所在収兵,終見敗覆,降唐復叛,竟以誅夷。〔馮述評〕魏先生高人,更勝厳子陵一籌。
書き下し
隋末に兵が興ると、魏先生は梁・宋の間に隠れた。楊玄感が戦に敗れ、謀主の李密は雁門に亡命し、姓名を変えて教授し、先生と往来した。先生はこれに戯れて曰く、「吾子を観るに、気は沮み目は乱れ、心は搖れ語は偸みます。今まさに蒲山の党を捕らえております。長者はもしかしてその人ではありませんか」と。李公は驚いて起ち、先生の手を捉えて曰く、「既に能く我を知るなら、どうして我を救えないことがあろうか」と。先生は曰く、「吾子には帝王の規模が無く、将帥の才略も無い。ただ乱世の雄傑なのみです」と。因って帝王・将帥・乱世の雄傑の興廃成敗の所以を極め陳べ、曰く、「吾は嘗て気を望んだが、汾・晋に聖人が生まれている。往ってこれに事えれば、富貴は取れるであろう」と。李公は衣を払って言った、「豎儒は与に計るに足らず」と。事の後、身を脱して西に走り、所在に兵を収めたが、終に敗覆に遇い、唐に降ってまた叛き、竟に誅夷された。〔馮述評〕魏先生は高人であり、更に厳子陵に一籌を勝る。
現代語訳
隋の末に戦乱が起こると、魏先生は梁と宋の間に隠れ住んだ。楊玄感が戦いに敗れ、その参謀だった李密は雁門に逃れ、姓名を変えて教師となり、魏先生と行き来した。先生は戯れに言った。「あなたを見ますに、気力はくじけ、目は落ち着かず、心は揺れて言葉は小声です。いま蒲山公の一党を捕らえているところですが、あなたはその人ではありませんか」。李密は驚いて立ち上がり、先生の手を握って言った。「私のことを見抜けるなら、どうして私を救えないことがありましょう」。先生は言った。「あなたには帝王としての器量がなく、将帥としての才略もない。ただ乱世の英雄にすぎません」。そして帝王、将帥、乱世の英雄のそれぞれの興りと衰え、成功と失敗の理由を詳しく述べ、言った。「私は以前、気を望んだところ、汾・晋の地に聖人が生まれていた。そちらに仕えれば、富貴を得られるだろう」。李密は衣を払って言った。「愚かな儒者とは相談しても無駄だ」。その後、李密は身を脱して西に走り、行く先々で兵を集めたが、最後には敗れて覆され、唐に降ったのに再び叛き、ついに誅殺された。〔馮夢龍の評〕魏先生は高潔な人であり、厳子陵よりさらに一枚上手である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『呻吟語』内篇・修身・我を攻むるの益に感ず我が過ちを攻むる者は、未だ必ずしも皆な過ち無きの人ならざるなり。苟しくも過ち無きの人の我を攻むるを求めば、則ち終身過ちを聞くを得ざらん。我は當に其の我を攻むるの益に感ずるのみ。彼に過ち有るか過ち無きか、何ぞ計るに暇あらんや。
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論語・子罕篇子曰く、法語の言は、能く従うこと無からんや。之を改むるを貴しと為す。巽与の言は、能く説ばざらんや。之を繹ぬるを貴しと為す。説びて繹ねず、従いて改めずんば、吾之を如何ともする末きのみ。
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『斉家論』上然れども推し出だし儒者とはいはれまじ。又世間に沙汰なき人にも出会うて見れば、経書はいふに及ばず、詩作文章達者なる能き学者あり。又儒者ならねども、少し心がけある人には、汝ぐらゐの学者は町並にも有るべし。其の中にて無縁の講釈すると、口広き事はいはれまじ。夫をもかまはず書付を出だされなば、聴く者もあるべけれど、一度聞きては、素読同前の講釈なりといひ、又口の悪しき者は、あの学問にて講釈するは、笑ふにたらずと譏るべし。たとひ十日廿日入れかはり聴衆ありとも、つづくまじ。其の時に至り、しまはんよりは、今七八年も学問し出でられなば、本望もとげ、恥を受くることも少なからんといはれし人も、過ぎ去りむかしがたりになりぬ。或人のいへるごとく、
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『呻吟語』内篇・應務・忠告して善く之を道く今子弟の父兄の責を受くるや、尚ほ堪へざる所有り。而るに況んや他人をや。孔子曰く、「忠告して善く之を道き、不可なれば則ち止む」と。此の語は交はりを全うするに止まらず、亦た以て氣を養ふ可し。
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易経・夬卦勝たずして往くは、咎なり。莫夜に戎有るも、中道を得ればなり。君子夬夬たるは、終に咎无きなり。其の行くこと次且たるは、位当らざればなり。言を聞きて信ぜざるは、聡明らかならざればなり。中行なれば咎无しとは、中未だ光いならざるなり。号ぶこと无きの凶は、終に長かるべからざるなり。
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『呻吟語』内篇・應務・人を曉すは當に是の如くなるべきか固より之をして愧ぢしむ可きに、乃ち之をして怨ましむ。固より之をして悔いしむ可きに、乃ち之をして怒らしむ。固より之をして感ぜしむ可きに、乃ち之をして恨ましむ。人を曉すは當に是の如くなるべきか。
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