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智囊 / 知微・諸葛亮・梅國楨

有客至昭烈所,談論甚愜。諸葛忽入,客遂起如廁。備對亮誇客,亮曰:「觀客色動而神懼,視低而盼數,奸形外漏,邪心內藏,必曹氏刺客也。」急追之,已越牆遁矣。少司馬梅公衡湘總督三鎮,虜酋忽以鐵數鎰來獻,曰:「此沙漠新產也。」公意必無此事,彼幸我弛鐵禁耳,乃慰而遣之,即以其鐵鑄一劍,鎸云:「某年月某王贈鐵。」因檄告諸邊:「虜中已產鐵矣,不必市釜。」其後虜缺釜,來言舊例,公曰:「汝國既有鐵,可自冶也。」虜使嘩言無有,公乃出劍示之。虜使叩頭服罪,自是不敢欺公一言。〔馮按〕公撫雲中,值虜王款塞,以靜鎮之。遇華人盜夷物者,置之法,夷人於賞額外求增一絲一粟,亦不得也。公一日大出獵,盛張旗幟,令諸將盡甲而從,校射大漠。縣令以非時妨稼,心怪之而不敢言。後數日,獲虜諜云,虜欲入犯,聞有備中止。令乃歎服,公之心計,非人所及。

新字:有客至昭烈所,談論甚愜。諸葛忽入,客遂起如廁。備対亮誇客,亮曰:「観客色動而神懼,視低而盼数,奸形外漏,邪心内蔵,必曹氏刺客也。」急追之,已越牆遁矣。少司馬梅公衡湘総督三鎮,虜酋忽以鉄数鎰来献,曰:「此沙漠新産也。」公意必無此事,彼幸我弛鉄禁耳,乃慰而遣之,即以其鉄鋳一剣,鎸云:「某年月某王贈鉄。」因檄告諸辺:「虜中已産鉄矣,不必市釜。」其後虜欠釜,来言旧例,公曰:「汝国既有鉄,可自冶也。」虜使嘩言無有,公乃出剣示之。虜使叩頭服罪,自是不敢欺公一言。〔馮按〕公撫雲中,値虜王款塞,以静鎮之。遇華人盗夷物者,置之法,夷人於賞額外求增一糸一粟,亦不得也。公一日大出猟,盛張旗幟,令諸将尽甲而従,校射大漠。県令以非時妨稼,心怪之而不敢言。後数日,獲虜諜云,虜欲入犯,聞有備中止。令乃嘆服,公之心計,非人所及。

書き下し

客が昭烈(劉備)の所に至り、談論は甚だ愜った。諸葛亮が忽ち入ると、客は遂に起って厠に如いた。備は亮に客を誇って語った。亮は曰く、「客を観るに、色は動き神は懼れ、視ることは低く盼ることは数しく、奸形は外に漏れ、邪心は内に蔵されています。必ず曹氏の刺客です」と。急いで追うと、已に牆を越えて遁れていた。少司馬の梅公衡湘は三鎮を総督していた。虜の酋が忽ち鉄数鎰を以て献じ、「これは沙漠の新産です」と言った。公は意うに、必ずこの事は無く、彼は我が鉄禁を弛めることを幸いとするのだと思い、そこで慰めて遣わし、即ちその鉄を以て一剣を鋳し、鎸って「某年月、某王贈鉄」と云った。因って諸辺に檄告して、「虜中には已に鉄が産する、釜を市うことは必要ない」と言った。その後、虜に釜が欠けて、来て旧例を言うと、公は曰く、「汝の国には既に鉄が有る、自ら冶すべきだ」と。虜使は嘩いで無いと言ったので、公は乃ち剣を出してこれに示した。虜使は叩頭して罪に服し、これより敢えて公に一言も欺かなかった。〔馮按〕公は雲中を撫するに、虜王が款塞するに値い、静を以てこれを鎮めた。華人で夷の物を盗む者に遇えば、これを法に置き、夷人が賞額の外に一絲一粟を増すことを求めても、得られなかった。公は一日、大いに出猟し、盛んに旗幟を張り、諸将に尽く甲して従わせ、大漠で校射した。県令は非時に稼を妨げるとして、心にこれを怪しんだが敢えて言わなかった。後数日、虜の諜を獲て云うには、虜は入犯しようとしたが、備え有るを聞いて中止したという。令は乃ち歎服し、公の心計は人の及ぶ所でないとした。

現代語訳

客が昭烈帝(劉備)のもとを訪れ、談論は大変うまく合った。そこへ諸葛亮が突然入ってくると、客はすぐに立ち上がって厠に行った。劉備は諸葛亮に客を褒めて語った。諸葛亮は言った。「あの客を見ますに、顔色は動揺して精神は恐れ、目線は低く何度も周囲を見回し、悪だくみの形が外に漏れ、よこしまな心が内に隠れています。きっと曹操の刺客です」。急いで追ったが、すでに塀を越えて逃げていた。少司馬の梅国楨(字は衡湘)は三つの辺境の鎮を総督していた。異民族の首長が突然、鉄数鎰を献上し、「これは砂漠で新しく産出したものです」と言った。梅公は、そんなことはあるはずがなく、相手は我が国が鉄の禁令を緩めることを望んでいるのだと考え、慰労して帰らせた。そしてその鉄で一振りの剣を鋳て、「某年某月、某王が鉄を贈る」と刻んだ。そして各辺境に通達した。「異民族の地では既に鉄が産出する、釜を買う必要はない」と。その後、異民族の国で釜が不足して、来て古い慣例を言うと、梅公は言った。「お前の国にはすでに鉄がある、自分で鋳造すればよい」。異民族の使者は騒いで鉄などないと言ったので、梅公は剣を出して見せた。使者は叩頭して罪に服し、それ以後、梅公に一言も偽らなくなった。〔馮夢龍の補足〕梅公が雲中を治めたとき、異民族の王が和平を求めて来たので、静かな態度で鎮めた。漢人で異民族の物を盗む者があれば法で裁き、異民族が決められた褒賞のほかに糸一本、粟一粒でも増やしてほしいと求めても、得られなかった。梅公はある日、大規模に狩りを催し、旗を盛大に立て、諸将に甲冑を着けて従わせ、砂漠で射撃訓練をした。県令は農作の時期でないとして心中疑ったが言い出せなかった。数日後、捕らえた異民族の間者が、異民族は侵入しようとしたが、備えがあると聞いて中止したと言った。県令は感服し、梅公の知略は人の及ぶところでないと言った。

解説

諸葛亮は客の顔色や視線の動きから刺客と見抜き、梅国楨は異民族の首長の貢ぎ物から相手の狙いを察して、その鉄で剣を鋳て証拠を残すことで、後の取引で嘘を封じました。前者は人物の観察、後者は意図の洞察とそれを逆手に取る仕掛けの巧みさを示しています。馮夢龍の補足では、狩りの演習が実は敵への示威だったという、周囲に理解されない戦略的行動にも触れています。管理職は、相手の好意や贈り物の目的を読み取り、記録を残して将来の駆け引きに備える姿勢と、一見無意味に見える行動に狙いを込める発想を学べます。

この章句が説くこと

色動而神懼鉄数鎰鎸剣観察交渉証拠の保全

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