智囊 / 知微・智過・絺疵
智伯行水,魏桓子、韓康子驂乘。智伯曰:「吾乃今知水可以亡人國也。」桓子肘康子,康子履桓子之跗。以汾水可以灌安邑,絳水可以灌平陽也。絺疵謂智伯曰:「韓、魏必反矣。」智伯曰:「子何以知之?」對曰:「以人事知之,夫從韓、魏而攻趙,趙亡,難必及韓、魏矣。今約勝趙而三分其地,城降有日,而二子無喜志,有憂色,是非反而何?」明日,智伯以其言告二子。二子曰:「此讒臣欲為趙氏游說,使疑二家而懈於攻趙也。不然,二家豈不利朝夕分趙氏之田,而欲為此危難不可成之事乎?」二子出,絺疵入曰:「主何以臣之言告二子也?」智伯曰:「子何以知之?」對曰:「臣見其視臣端而疾趨,知臣得其情故也。」
新字:智伯行水,魏桓子、韓康子驂乗。智伯曰:「吾乃今知水可以亡人国也。」桓子肘康子,康子履桓子之跗。以汾水可以灌安邑,絳水可以灌平陽也。絺疵謂智伯曰:「韓、魏必反矣。」智伯曰:「子何以知之?」対曰:「以人事知之,夫従韓、魏而攻趙,趙亡,難必及韓、魏矣。今約勝趙而三分其地,城降有日,而二子無喜志,有憂色,是非反而何?」明日,智伯以其言告二子。二子曰:「此讒臣欲為趙氏游説,使疑二家而懈於攻趙也。不然,二家豈不利朝夕分趙氏之田,而欲為此危難不可成之事乎?」二子出,絺疵入曰:「主何以臣之言告二子也?」智伯曰:「子何以知之?」対曰:「臣見其視臣端而疾趨,知臣得其情故也。」
書き下し
智伯が水を行くと、魏桓子と韓康子が驂乗した。智伯は曰く、「吾は今に及んで初めて水が以て人の国を亡ぼし得ることを知った」と。桓子は康子を肘で突き、康子は桓子の跗を履んだ。汾水は以て安邑に灌ぐことができ、絳水は以て平陽に灌ぐことができるからである。絺疵は智伯に謂った、「韓・魏は必ず反きましょう」と。智伯は曰く、「子はなぜそれを知るのか」と。対えて曰く、「人事を以て知ります。そもそも韓・魏に従って趙を攻めるのに、趙が亡べば、難は必ず韓・魏に及びます。今、約して趙に勝って其の地を三分するとし、城の降る日も近いのに、二子には喜ぶ志が無く、憂色が有ります。これが反するのでなければ何でしょうか」と。明日、智伯はその言を二子に告げた。二子は曰く、「これは讒臣が趙氏のために游説し、二家を疑わせて趙を攻めることを懈らせようとするものです。さもなければ、二家は朝夕に趙氏の田を分けて利を得られるのに、どうしてこの危難にして成るべからざることをしようとしましょうか」と。二子が出ると、絺疵は入って曰く、「主はなぜ臣の言を二子に告げたのですか」と。智伯は曰く、「子はなぜそれを知るのか」と。対えて曰く、「臣が見るに、その視ること端しくして疾く趨りました。臣が其の情を得たと知った故です」と。
現代語訳
智伯が水の様子を見て回るとき、魏桓子と韓康子が同じ車に陪乗した。智伯は言った。「私は今になって初めて、水が人の国を滅ぼせることを知った」。魏桓子は韓康子を肘でつつき、韓康子は魏桓子の足を踏んだ。汾水で安邑を水没させることができ、絳水で平陽を水没させることができるからである。絺疵は智伯に言った。「韓と魏はきっと背きます」。智伯は言った。「どうして分かるのか」。絺疵は答えた。「人の世の道理から分かります。韓・魏に従って趙を攻めていますが、趙が滅べば、災いは必ず韓・魏に及びます。いま趙に勝って土地を三分すると約束し、城が降る日も近いのに、二人には喜ぶ様子がなく、憂い顔があります。背こうとしているのでなければ何でしょうか」。翌日、智伯はこの言葉を二人に告げた。二人は言った。「これは讒言する臣が趙氏のために遊説し、私たち二家に疑いを抱かせて趙への攻撃を緩めさせようとするものです。そうでなければ、二家は朝夕のうちに趙氏の田を分けて利益を得られるのに、どうしてこのような危うく成功しがたいことを企てましょうか」。二人が退出すると、絺疵は入って言った。「主君はなぜ私の言葉を二人にお告げになったのですか」。智伯は言った。「お前はどうして分かるのか」。絺疵は答えた。「私が見ましたところ、二人は私を真っすぐに見て急ぎ足で去りました。私が彼らの内心を知ったと悟ったからです」。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『韓非子』外儲説右上第三十四是を以て好惡見るれば則ち下因る有り、而して人主惑わさる。
-
『韓非子』外儲説右上第三十四堂谿公術を知る、故に玉卮を問う。昭侯術を能くす、故に以に聴きて獨り寢ぬ。
-
『韓非子』三守第十六人主に三守有り。三守完ければ、則ち国安く身栄ゆ。三守完からざれば、則ち国危く身殆し。何をか三守と謂ふ。人臣に当途の失、用事の過、挙臣の情を議すること有るに、人主心に蔵せずして之を近習能人に漏らし、人臣の言有らんと欲する者をして、敢へて下は近習能人の心に適はずんばあらずして、乃ち上は以て人主に聞かしむ。然らば則ち端言直道の人見ゆることを得ずして、忠直日に疎し。
-
李衛公問対・卷上兵を善く用うる者は、先ず測る可からざるを為せば、則ち敵は其の之く所に乖く。
-
孫子・用間篇微なるかな、微なるかな。間を用いざる所無し。間事未だ発せずして先ず聞こゆれば、間と告げられし所の者と皆死す。
-
三略・中略軍勢に曰く、巫祝を禁じ、吏士の為に軍の吉凶を卜問することを得ざらしむ。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る