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智囊 / 通簡・高拱

乃開以五事,一責令國亨獻出撥置人犯,一照夷俗令賠償安信等人命,一令分地安插疏窮母子,一削奪宣慰職銜,與伊男權替,一從重罰以懲其惡。而國亨見安智居省中,益疑畏,恐軍門誘而殺之,擁兵如故,終不赴勘,而上疏辨冤。阮狃於浮議,復上疏請剿,拱念剿則非計,不剿則損威,乃授意於兵部,題覆得請,以吏科給事賈三近往勘。國亨聞科官奉命來勘,喜曰:「吾係聽勘人,軍門必不敢殺我,我乃可以自明矣。」於是出群奸而赴省聽審,五事皆如命,願罰銀三萬五千兩自贖。安智猶不從,阮治其用事撥置之人,始伏。智亦革管事,隨母安插。科官未到,而事已定矣。〔馮述評〕國家於土司,以戎索羈縻之耳,原與內地不同。彼世享富貴,無故思叛,理必不然。皆當事者或濬削,或慢殘,或處置失當,激而成之。反尚可原,況未必反乎?如安國亨一事,若非高中玄力為主持,勢必用兵;即使幸而獲捷,而竭數省之兵糧,以勝一自相仇殺之夷人,甚無謂也。嗚呼!前事不忘,後事之師。吾今日安得不思中玄乎!

新字:乃開以五事,一責令国亨献出撥置人犯,一照夷俗令賠償安信等人命,一令分地安挿疏窮母子,一削奪宣慰職銜,与伊男権替,一従重罰以懲其悪。而国亨見安智居省中,益疑畏,恐軍門誘而殺之,擁兵如故,終不赴勘,而上疏弁冤。阮狃於浮議,復上疏請剿,拱念剿則非計,不剿則損威,乃授意於兵部,題覆得請,以吏科給事賈三近往勘。国亨聞科官奉命来勘,喜曰:「吾係聴勘人,軍門必不敢殺我,我乃可以自明矣。」於是出群奸而赴省聴審,五事皆如命,願罰銀三万五千両自贖。安智猶不従,阮治其用事撥置之人,始伏。智亦革管事,随母安挿。科官未到,而事已定矣。〔馮述評〕国家於土司,以戎索羈縻之耳,原与内地不同。彼世享富貴,無故思叛,理必不然。皆当事者或濬削,或慢残,或処置失当,激而成之。反尚可原,況未必反乎?如安国亨一事,若非高中玄力為主持,勢必用兵;即使幸而獲捷,而竭数省之兵糧,以勝一自相仇殺之夷人,甚無謂也。嗚呼!前事不忘,後事之師。吾今日安得不思中玄乎!

書き下し

乃ち開くに五事を以てす。一に国亨に責めて撥置の人犯を献出せしめ、一に夷俗に照らして安信らの人命を賠償せしめ、一に地を分けて疏窮の母子を安插せしめ、一に宣慰の職銜を削奪して伊の男に権に替わらしめ、一に重きに従いて罰し以て其の悪を懲らしむ。而るに国亨は安智の省中に居るを見て益々疑い畏れ、軍門の誘いて之を殺さんことを恐れ、兵を擁すること故の如く、終に勘に赴かず、上疏して冤を弁ず。阮は浮議に狃れ、復た上疏して剿を請う。拱は剿せば則ち計に非ず、剿せざれば則ち威を損なうと念い、乃ち意を兵部に授け、題覆して請を得、吏科給事賈三近を以て往きて勘せしむ。国亨は科官の命を奉じて来り勘すと聞き、喜びて曰く、「吾は聴勘の人に係る、軍門は必ず敢えて我を殺さじ、我は乃ち以て自ら明らかにすべし」と。是に於いて群奸を出だして省に赴き審を聴き、五事は皆命の如くし、銀三万五千両を罰して以て自ら贖わんことを願う。安智は猶お従わざりしが、阮は其の事を用い撥置せし人を治め、始めて伏す。智も亦た管事を革められ、母に随いて安插さる。科官の未だ到らざるに、事は已に定まれり。〔馮述評〕国家の土司に於けるや、戎索を以て羈縻するのみ、原より内地と同じからず。彼は世々富貴を享く、故無くして叛を思うは、理として必ず然らず。皆な当事者の或いは濬削し、或いは慢残し、或いは処置を失当し、激して之を成すなり。反すら猶お原すべし、況んや未だ必ずしも反せざるをや。安国亨の一事の如きは、若し高中玄の力めて主持するに非ざれば、勢い必ず兵を用いん。即使い幸いにして捷を獲るも、数省の兵糧を竭くして、以て一の自ら相い仇殺する夷人に勝つは、甚だ無謂なり。嗚呼、前事忘れざるは後事の師なり。吾れ今日安んぞ中玄を思わざるを得んや。

現代語訳

高拱はそこで五か条を示した。第一に、安国亨にそそのかされて動いた者たちを差し出させること。第二に、異民族の慣習に照らして安信らの人命を賠償させること。第三に、土地を分けて、困窮している母子を落ち着かせること。第四に、宣慰使の官職を取り上げ、その子に仮に代わらせること。第五に、重い罰を科してその悪を懲らしめることである。ところが国亨は、安智が省城にいるのを見てますます疑い恐れ、総督が誘い出して殺すのではないかと案じ、兵を抱えたままで、ついに取り調べにも出頭せず、上書して冤罪を訴えた。阮は世間の噂に流され、またも上書して討伐を願い出た。高拱は、討伐するのは良策でなく、討伐しなければ朝廷の威信が損なわれると考え、兵部に意向を伝え、上奏が認められて、吏科給事中の賈三近が派遣されて調べることになった。国亨は科官が命を受けて調べに来ると聞いて喜び、「私は取り調べを受ける身だ。総督は決して私を殺せまい。これで自分の潔白を明らかにできる」と言った。そこで多くの悪者を差し出して省城に赴き審問を受け、五か条はすべて命じられたとおりにし、銀三万五千両の罰金で罪を償いたいと申し出た。安智はなお従わなかったが、阮が事を企てそそのかした者たちを処罰して、ようやく服した。智も管理の職を解かれ、母に従って住まいを定められた。科官がまだ到着しないうちに、事はすでに決着していた。〔馮夢龍の評〕国家が土司に対しては、手綱で繋ぎ止めるだけであり、もともと内地とは違う。彼らは代々富貴を享受しており、理由もなく叛を思うことは、道理として決してありえない。みな当事者が、あるいは搾り取り、あるいは侮り傷つけ、あるいは処置を誤って、追いつめて叛にさせたのである。叛いた場合ですら情状を酌めるのに、まして本当に叛くとは限らないのだからなおさらだ。安国亨の件のように、高中玄が力を尽くして主導しなければ、情勢からして必ず兵を用いたであろう。たとえ運よく勝ったとしても、数省の兵糧を使い果たして、仲間内で殺し合っている異民族に勝つのでは、まったく意味がない。ああ、前の事を忘れないことが後の事の手本となる。私は今日、どうして中玄を思わずにいられようか。

解説

異民族の首長が疑心から兵を抱えて動かない場面で、高拱は討伐を急がず、五か条の条件と第三者の査察役を用意して、相手が安心して出てこられる道を作りました。力で押せば大きな損失になる局面では、まず相手の恐れの正体を見抜き、出頭しても殺されないと思える形を整えることが決め手になります。現代の管理職でも、反発している部下や取引先に処分を突きつける前に、相手が何を恐れて動かないのかを探るほうが早く片づきます。馮夢龍は、叛乱の多くは統治する側の拙さが招くと述べ、無用の戦いを避けた手腕を高く評価しています。

この章句が説くこと

五事聴勘の人軍門必ず敢えて我を殺さじ判断危機管理説得

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