智囊 / 遠猶・李晟
李晟之屯渭橋也,熒惑守歲,久乃退,府中皆賀曰:「熒惑退,國家之利,速用兵者昌。」晟曰:「天子暴露,人臣當力死勤難,安知天道邪?」至是乃曰:「前士大夫勸晟出兵,非敢拒也。且人可用而不可使之知也。夫唯五緯盈縮不常,晟懼復守歲,則吾軍不戰自屈矣!」皆曰:「非所及也!」〔馮述評〕田單欲以神道疑敵,李晟不欲以天道疑軍。
新字:李晟之屯渭橋也,熒惑守歳,久乃退,府中皆賀曰:「熒惑退,国家之利,速用兵者昌。」晟曰:「天子暴露,人臣当力死勤難,安知天道邪?」至是乃曰:「前士大夫勧晟出兵,非敢拒也。且人可用而不可使之知也。夫唯五緯盈縮不常,晟懼復守歳,則吾軍不戦自屈矣!」皆曰:「非所及也!」〔馮述評〕田単欲以神道疑敵,李晟不欲以天道疑軍。
書き下し
李晟の渭橋に屯するや、熒惑歳を守り、久しくして乃ち退く。府中皆賀して曰く、「熒惑退く、国家の利なり。速やかに兵を用うる者は昌んなり」と。晟曰く、「天子は暴露し、人臣は当に力めて難に死し勤むべし、安んぞ天道を知らんや」と。是に至りて乃ち曰く、「前に士大夫が晟に兵を出だすことを勧めしは、敢えて拒むに非ざるなり。且つ人は用いるべくして之に知らしむべからず。夫れ唯だ五緯の盈縮常ならず、晟は復た歳を守らんことを懼る、則ち吾が軍は戦わずして自ら屈せん」と。皆曰く、「及ぶ所に非ざるなり」と。〔馮述評〕田単は神道を以て敵を疑わしめんと欲し、李晟は天道を以て軍を疑わしめざらんと欲す。
現代語訳
李晟が渭橋に駐屯していたとき、火星(熒惑)が歳星(木星)の近くにとどまり、長いのち退いた。幕府の人々は皆祝って言った。「火星が退きました。国家に利があります。早く兵を動かす者が栄えるでしょう」。晟は言った。「天子は野に晒されておられる。臣下は力を尽くして難に死ぬべきで、天の運行など知ったことか」。この時になって、こう言った。「先に士大夫が私に出兵を勧めたとき、拒んだのではない。人は用いることはできても、すべてを知らせてはならない。五つの惑星の動きは常に一定ではなく、もしまた火星が歳星に居座ることがあれば、我が軍は戦わずして自ら気力を失ってしまうからだ」。人々は皆、「我らの及ぶところではありません」と言った。〔馮夢龍の評〕田単は神の力で敵に疑いを抱かせようとし、李晟は天の道理で自軍に疑いを抱かせまいとした。
解説
この章句が説くこと
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