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智囊 / 遠猶・王安

鄭貴妃有寵於神廟。熹宗大婚禮,妃當主婚。廷臣謀於中貴王安曰:「主婚者,乃與政之漸,不可長也,奈何?」或獻計曰:「以位則貴妃尊,以分則穆廟隆慶恭妃長,盍以恭妃主之?」曰:「奈無璽何?」曰:「以恭妃出令,而以御璽封之,誰曰不然?」安從之,自是鄭氏不復振。

新字:鄭貴妃有寵於神廟。熹宗大婚礼,妃当主婚。廷臣謀於中貴王安曰:「主婚者,乃与政之漸,不可長也,奈何?」或献計曰:「以位則貴妃尊,以分則穆廟隆慶恭妃長,盍以恭妃主之?」曰:「奈無璽何?」曰:「以恭妃出令,而以御璽封之,誰曰不然?」安従之,自是鄭氏不復振。

書き下し

鄭貴妃、神廟に寵有り。熹宗の大婚の礼に、妃当に主婚たるべし。廷臣、中貴王安に謀りて曰く、「主婚とは、乃ち政に与るの漸なり、長ずべからず。奈何せん」と。或いは計を献じて曰く、「位を以てすれば則ち貴妃尊く、分を以てすれば則ち穆廟の隆慶の恭妃は長なり。盍ぞ恭妃を以て之を主らしめざる」と。曰く、「璽無きを奈何せん」と。曰く、「恭妃を以て令を出し、而して御璽を以て之を封ぜば、誰か然らずと曰わん」と。安之に従う。是より鄭氏は復た振るわず。

現代語訳

鄭貴妃は神宗に寵愛されていた。熹宗の婚礼にあたって、鄭貴妃が婚礼を取り仕切る立場に当たった。朝廷の臣たちは宦官の王安に相談した。「婚礼を主宰するのは、政治に関与する第一歩です。助長してはなりません。どうしましょう」。ある人が策を出した。「地位でいえば貴妃が尊いが、世代の序列でいえば穆宗の隆慶帝の恭妃が年長だ。恭妃に取り仕切らせてはどうか」。別の人が言った。「印璽がありません」。「恭妃の名で命令を出し、御璽で封をすれば、誰も違うとは言えない」。王安はこれに従った。それ以来、鄭氏は二度と勢力を盛り返せなかった。

解説

鄭貴妃が婚礼を主宰すれば、後宮が政治に関与する足掛かりになります。廷臣たちは正面から対決せず、序列の別の基準、つまり年長という切り口で恭妃を立て、主催者を差し替えました。正面から拒めば争いになる事案を、制度上の正当な根拠を用いて静かに迂回した例です。現代の管理職も、特定の人物や部署への権限集中を懸念する時、感情的な反対より、役割分担や規程に沿った別案を示す方が角が立ちません。相手を否定せず、正統な代替の筋を用意する発想が学べます。

この章句が説くこと

主婚政に与るの漸恭妃序列代替案根回し

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