智囊 / 見大・張飛
先主一見馬超,以為平西將軍,封都亭侯,超見先主待之厚也,闊略無上下禮,與先主言,常呼字,關羽怒,請殺之,先主不從,張飛曰:「如是,當示之以禮。」明日大會諸將,羽、飛並挾刃立直,超入,顧坐席,不見羽、飛座,見其直也,乃大驚。自後乃尊事先主。〔馮述評〕釋嚴顏,誨馬超,都是細心作用,後世目飛為粗人,大枉。
新字:先主一見馬超,以為平西将軍,封都亭侯,超見先主待之厚也,闊略無上下礼,与先主言,常呼字,関羽怒,請殺之,先主不従,張飛曰:「如是,当示之以礼。」明日大会諸将,羽、飛並挟刃立直,超入,顧坐席,不見羽、飛座,見其直也,乃大驚。自後乃尊事先主。〔馮述評〕釈厳顔,誨馬超,都是細心作用,後世目飛為粗人,大枉。
書き下し
先主、一たび馬超を見て、以て平西将軍と為し、都亭侯に封ず。超は先主の待つこと厚きを見て、闊略にして上下の礼無く、先主と言うに、常に字を呼ぶ。関羽怒りて、これを殺さんことを請うも、先主は従わず。張飛曰く、「是くの如くんば、当に示すに礼を以てすべし」と。明日、大いに諸将を会し、羽・飛は並びに刃を挟みて立ち直す。超入りて、坐席を顧みるに、羽・飛の座を見ず、その直するを見て、乃ち大いに驚く。自後、乃ち先主を尊事す。〔馮述評〕厳顔を釈き、馬超を誨うるは、都て是れ細心の作用なり。後世、飛を目して粗人と為すは、大いに枉げたり。
現代語訳
劉備は馬超に一度会っただけで、平西将軍に任じ、都亭侯に封じました。馬超は劉備が自分を厚遇するのを見て、おおざっぱで上下の礼をわきまえず、劉備と話すときいつも字(あざな)で呼びました。関羽は怒り、馬超を殺すよう願い出ましたが、劉備は聞き入れませんでした。張飛は言いました。「そうであれば、礼というものを示してやりましょう。」翌日、諸将を大いに集め、関羽と張飛は二人とも刀を帯びて控えて立ちました。馬超が入ってきて座席を見回すと、関羽と張飛の席がなく、二人が立って控えているのを見て、たいへん驚きました。それ以降、馬超は劉備を敬って仕えるようになりました。〔馮夢龍の評〕厳顔を許し、馬超に教え諭したのは、いずれも細やかな心遣いから出た働きです。後世、張飛を粗野な人物と見なすのは、大きな見当違いです。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
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『智囊』知微・諸葛亮・梅國楨客が昭烈(劉備)の所に至り、談論は甚だ愜った。諸葛亮が忽ち入ると、客は遂に起って厠に如いた。備は亮に客を誇って語った。亮は曰く、「客を観るに、色は動き神は懼れ、視ることは低く盼ることは数しく、奸形は外に漏れ、邪心は内に蔵されています。必ず曹氏の刺客です」と。急いで追うと、已に牆を越えて遁れていた。少司馬の梅公衡湘は三鎮を総督していた。虜の酋が忽ち鉄数鎰を以て献じ、「これは沙漠の新産です」と言った。公は意うに、必ずこの事は無く、彼は我が鉄禁を弛めることを幸いとするのだと思い、そこで慰めて遣わし、即ちその鉄を以て一剣を鋳し、鎸って「某年月、某王贈鉄」と云った。因って諸辺に檄告して、「虜中には已に鉄が産する、釜を市うことは必要ない」と言った。その後、虜に釜が欠けて、来て旧例を言うと、公は曰く、「汝の国には既に鉄が有る、自ら冶すべきだ」と。虜使は嘩いで無いと言ったので、公は乃ち剣を出してこれに示した。虜使は叩頭して罪に服し、これより敢えて公に一言も欺かなかった。〔馮按〕公は雲中を撫するに、虜王が款塞するに値い、静を以てこれを鎮めた。華人で夷の物を盗む者に遇えば、これを法に置き、夷人が賞額の外に一絲一粟を増すことを求めても、得られなかった。公は一日、大いに出猟し、盛んに旗幟を張り、諸将に尽く甲して従わせ、大漠で校射した。県令は非時に稼を妨げるとして、心にこれを怪しんだが敢えて言わなかった。後数日、虜の諜を獲て云うには、虜は入犯しようとしたが、備え有るを聞いて中止したという。令は乃ち歎服し、公の心計は人の及ぶ所でないとした。
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『智囊』靈變・張詠・徐達張乖崖は成都を守る。兵火の余り、人は反側を懐く。一日、大閲し、始めて出づれば、衆は遂に嵩呼すること三たびす。乖崖も亦た馬を下り、東北を望みて三たび呼び、復た轡を攬りて行く。衆は敢えて嘩せず。上は嘗て徐中山王を召して飲ましめ、夜に迨び、強いて之を醉わしむ。醉うこと甚だしく、内侍に命じて旧内に送りて宿せしむ。旧内とは、上の呉王たりし時の居る所なり。中夜、王の酒醒め、何れの地に宿すかを問う。内侍曰く、「旧内なり」と。即ち起ちて丹陛の下に趨り、北面して再拝し、三たび叩頭して乃ち出づ。上は之を聞き、大いに説ぶ。〔評〕乖崖の三呼にして、軍の嘩ぎ頓かに息み、中山の三叩頭にして、主の信は益々堅し。倉卒の間に乃ち許大の主張有り、特に恪謹するのみに非ず。
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『長短経』是非劉備、来たりて曹公に奔る。曹公之を以て豫州牧と為す。或るひと曹公に謂いて曰く「備に雄志有り。今、早く図らずんば、後に必ず患いと為らん」と。曹公、以て郭嘉に問う。嘉曰く「是れ有り。然れども公、剣を提げて義兵を起こし、百姓の為に暴を除き、誠を推し信に仗りて、以て儁傑を召す。猶お其の未だ来たらざるを懼る。今、備に英雄の名有り、窮して已に帰するを以て之を害さば、賢を害するを以て名と為さん。則ち智士将に自ら疑い、心を迴らして主を択ばんとす。公、誰と与にか天下を定めん。夫れ一人の患いを除きて、以て四海の望を阻むは、安危の機なり。察せざる可からず」と。曹公曰く「善し」と。〔非に曰く〕傅子称す、郭嘉、太祖に言いて曰く「備に雄志有りて甚だ衆心を得たり。関侯・張飛は皆な万人の敵なり。之が為に死して用いらる。嘉、之を観るに、其の謀は未だ測る可からざるなり。古人に言える有りて曰く『一日敵を縦にすれば、数世の患い』と。宜しく早く之が所を為すべし」と。曹公は方に英雄を招懐し、以て大信を明らかにす。未だ嘉の謀に従うを得ず。
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『長短経』三国権先主、成都を囲むこと数十日、璋出でて降る。蜀中殷盛豊楽なり。先主、酒を置き大いに士卒を饗し、蜀の城中の金銀を取りて将士に分賜し、其の穀帛を還す。初め劉璋を攻むるに、備、士衆と約して曰く「若し事定まらば、府庫の百物、孤は予ること無し」と。成都を抜くに及び、士衆皆干戈を捨てて諸蔵に赴き、競いて宝物を取る。軍用足らず、備甚だ之を憂う。劉巴曰く「易きのみ。但だ当に直百銭を鋳、諸物の価を平らにし、吏をして官市を為さしむべし」と。備之に従う。数月の間に、府庫充実す。先主、益州牧を領し、諸葛亮を股肱と為し、法正を謀主と為し、関侯・張飛・馬超を爪牙と為し、許靖・麋竺・簡雍を賓友と為す。董和・黄権・李厳等は、本と璋の援用する所なり。呉壹・費観等は、又た璋の婚親なり。彭羕は、又た璋の排擯する所なり。劉巴は、宿昔の忌恨する所なり。皆之を顕任に処き、其の器能を尽くさしむ。有志の士、競い勧まざるは無きなり。〕
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『智囊』億中・黃權・王累・鄭度初め、劉璋、人を遣わして先主を迎う。主簿黄権、怒りて言いて曰く、「火を厝きて薪に積めば、其の勢い必ず焚く。溺るるに及びて船を呼ぶとも、悔いて将に及ぶなけん。左将軍には驍名有り、今迎え到らば、部曲を以て之を遇せんと欲すれば則ち其の心を満たさず、賓客を以て待せんと欲すれば則ち一国に二君を容れず。若し客に泰山の安有らば、則ち主に累卵の危有り。且く関を閉じて以て河清を待つべし」と。従事王累は自ら州門に倒懸して諫めて曰く、「両高は重ぬべからず、両大は容るべからず、両貴は双ぶべからず、両勢は同じくすべからず。重・容・双・同は、必ず其の功を争わん」と。皆な聴かず。従事鄭度は奇計を好み、従容として説きて曰く、「左将軍は軍を懸けて我を襲い、兵は万に満たず、士衆は未だ附かず、野谷を資とし、軍に輜重無し。其の計は、巴西・梓潼の民を尽く駆り、涪水より以西、其の倉廩野谷を一に皆な焼除し、高壘深溝にして、静かに以て之を待つに如かず。彼至りて戦を請わば、許すこと勿かれ。久しく資る所無くば、百日に過ぎずして必ず将に自ら走らんとす。走るを撃たば、此れ擒にするのみ」と。先主聞きて之を悪み、法正に謂いて曰く、「度の計若し行われば、吾が事去らん」と。正曰く、「終に用うる能わず、憂うる無し」と。卒に正の料る如く、璋は其の群下に謂いて曰く、「吾、敵を駆りて以て民を安んずるを聞くも、未だ民を駆りて以て敵を避くるを聞かず」と。是に於いて度を黜け、其の計を用いず。先主、成都に入り、度を召して謂いて曰く、「向に卿の計を用いば、孤の首は蜀門に懸けられしならん」と。引きて賓客と為し、曰く、「此れ吾が広武君なり」と。
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『智囊』詭道・呂蒙・馬隆蒙入りて城に拠り、尽く羽及び将士の家属を得て、皆撫慰す。民の一笠を取りて以て官の鎧を覆う者有り。其の人は蒙の郷里に係るも、涕を垂れてこれを斬る。是に於いて軍中震え栗れ、道に遺ちたるを拾わず。蒙は旦暮に親近をして耆老を存恤せしめ、足らざる所を問い、病む者には医薬を給し、飢え寒ゆる者には衣糧を賜い、府蔵の財宝は、皆封閉して以て権の至るを待つ。羽還り、道路に在りて数々人をして蒙と相い問わしむ。蒙は輒ち其の使を厚く遇し、城中を週遊せしめ、家家に致問し、或いは手書して信を示す。使い還りて、私かに相い参信し、咸な家門恙無く、待たるること平時に過ぐるを知る。故に吏士に鬥心無く、羽遂に擒と成る。太康の初め、南虜の成奚、毎に辺患と為る。西平太守の馬隆、軍を帥いてこれを討つ。虜は険に拠りて拒守す。隆、軍士をして皆農器を負わしめ、将に田する者の若くせんとす。虜は隆に征討の意無しと以い、衆を御すること稍々怠る。隆、其の備え無きに因りて兵を進めてこれを撃破し、隆の政を畢るまで、敢えて寇を為さず。
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