智囊 / 見大・秦檜
味道恐蹙而前曰:「味道今秋忝冒鄉薦,鄉人集錢為赴省之贐以百千,就置建陽紗得二百端。因計道路所經場務盡行抽稅,則至都下不存其半。竊計當今負天下重名而愛獎士類,唯內翰與侍郎耳。縱有敗露,必能情貸,遂假先生名銜,緘封而來。不知先生已臨鎮此邦,罪實難逃。」公熟視,笑,呼掌箋吏去其舊封,換題新銜,附至東京竹竿巷,並手書子由書一紙,付之,曰:「先輩這回將上天去也無妨。」明年味道及第,來謝。二事俱長人智量者。
新字:味道恐蹙而前曰:「味道今秋忝冒郷薦,郷人集銭為赴省之贐以百千,就置建陽紗得二百端。因計道路所経場務尽行抽税,則至都下不存其半。窃計当今負天下重名而愛獎士類,唯内翰与侍郎耳。縦有敗露,必能情貸,遂仮先生名銜,緘封而来。不知先生已臨鎮此邦,罪実難逃。」公熟視,笑,呼掌箋吏去其旧封,換題新銜,附至東京竹竿巷,並手書子由書一紙,付之,曰:「先輩這回将上天去也無妨。」明年味道及第,来謝。二事倶長人智量者。
書き下し
味道は恐れ蹙まりて前みて曰く、味道は今秋、忝なくも郷薦に冒し、郷人は銭を集めて赴省の贐と為すこと百千。就きて建陽の紗を置き、二百端を得たり。因りて計るに、道路の経る所の場務は尽く抽税を行わば、則ち都下に至りて其の半ばを存せず。竊かに当今の天下の重名を負いて士類を愛し奨むるを計るに、唯だ内翰と侍郎のみ。縦い敗露する有るも、必ず能く情貸せんと。遂に先生の名銜を仮り、緘封して来たる。先生の已に此の邦に臨鎮せるを知らず。罪は実に逃れ難し、と。公は熟視して笑い、掌箋吏を呼びて其の旧封を去らしめ、換えて新銜を題し、東京の竹竿巷に附至せしめ、並びに手ずから子由の書一紙を書き、之に付して曰く、先輩よ、這回は天に上り去るも無妨なり、と。明年、味道は及第し、来たりて謝す。二事は俱に人の智量を長ずるものなり。
現代語訳
呉味道は恐れ入って進み出て言った。私は今年の秋、かたじけなくも郷試に推薦され、同郷の人々が金を集めて都に上る旅費として百千を贈ってくれました。そこで建陽の紗を買い入れ、二百反を得ました。計算すると、道中の関所や税務所ですべて課税されれば、都に着く頃には半分も残りません。ひそかに考えますと、今、天下に重い名声を負いながら士人を愛し励ます方は、ただ内翰(蘇軾)と侍郎(蘇轍)のお二人だけです。たとえ露見しても、きっと事情を汲んで許してくださると思い、先生のお名前を借りて荷を封じて参りました。先生がすでにこの地に赴任しておられるとは知りませんでした。罪はまことに逃れ難いものです、と。蘇公はじっと見て笑い、書記役の役人を呼んでその旧い封を外させ、新しい官名に書き換え、東京の竹竿巷に送らせた。そして自ら子由(蘇轍)への手紙を一通書き、渡して言った。君、今度は天に上っても差し支えないぞ、と。翌年、呉味道は及第し、礼を言いに来た。この二つの事は、どちらも人の知恵と度量を伸ばすものである。
解説
この章句が説くこと
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『驢鞍橋』卷下夜話に日く、人皆人を育ることを知らず、喩へば人有り、我化者幽霊をも何とも思はぬと云はば、あはれ出して見せたい迄、跡も見ずに逃けんずかと云て、はや人を推崩す也。是れ悪きこと也。若し左様の者有らは、扨ても好き機質哉。夫夫なるほど强く用ひたるか好きそと機を付て育つへき也。是れ万事に亘ること也。又曰く、愚なること世に多し、人皆子を能く育つることを知らず、まだ匍廻る頃より匍てこい、之れくれん、あれくれんと云て、只もの欲を授くる也。
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『講孟余話』萬章下 首章然れども是れ吾が徒小人の知行偏廃の弊を言ふのみ。其の実は知にして行を廃するは真の知に非ず、行にして知を廃するは実の行に非ず。故に知行二つにして一つ、而して先後亦相待ちて済すことあるなり。抑々伯夷・伊尹・柳下恵の力ありて巧を闕くと云ふ者は、浅近の論に非ず。孔子の巧力倶に全きを以て是に比して、初めて其の少しき闕あるを見るのみ。孔門の諸子、顔淵・閔子・冉牛の「体を具へて微なる」如き、巧にして力足らずと言ふべし。子夏・子游・子張の「一体を具ふる」如き、力ありて巧足らずと言ふべし。後の道を学ぶ者、孔子を以て宗とすれば、巧力倶に至り、知行兼ね進むべきは勿論なれども、前輩を論じ及び人材を育する如きは、妄りに是を以て衆人を律することなかれ。人各々能あり不能あり。
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論語・顔淵篇子曰く、『君子は人の美を成し、人の悪を成さず。小人は是に反す。』
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史記 殷本紀伊尹之を嘉し、迺ち太甲訓三篇を作り、帝太甲を襃めて、太宗と称す。太宗崩じ、子沃丁立つ。帝沃丁の時、伊尹卒す。既に伊尹を亳に葬り、咎単遂に伊尹の事を訓へ、沃丁を作る。沃丁崩じ、弟太庚立つ。是を帝太庚と為す。帝太庚崩じ、子帝小甲立つ。帝小甲崩じ、弟雍己立つ。是を帝雍己と為す。殷の道衰へ、諸侯或いは至らず。帝雍己崩じ、弟太戊立つ。是を帝太戊と為す。
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葉隠・聞書第一御家中(ごかちゅう)、よき御被官(ごひかん)出来候様(できそうろうよう)に、人を仕立(した)て候事(そうろうこと)忠節なり。我が持分(もちぶん)を人を以て御用に立つるは本望(ほんもう)の事なり。
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