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竹馬抄 / 恩を待たず忠を尽くす

一君に仕へたてまつる事、かならずまづ恩を蒙て、それにしたがひて、わが身の忠をも奉公をもはげまさんと思ふ人のみ侍るなり、うしろざまに心得たる事なり、もとより世中にすめるは君の恩德なり、それを忘れて猶望を高くして、世をも君をもうらむる人のみ侍る、いとうたてしき事也、一世中にやくの侍べき人の、その身を卑下して、我身やすくはとおもふ、かへす〱口おしく頑しき事也、人と生れなば、萬人に超、他人を助くべき願をおこして、他のため心をくだくを生々世々のおもひ出とはすべき也、菩薩といふもたゞ此ためなれば、凡夫の身として菩薩の願にひとしくせば、思ひ出なにごとか是にまさるべき、

新字:一君に仕へたてまつる事、かならずまづ恩を蒙て、それにしたがひて、わが身の忠をも奉公をもはげまさんと思ふ人のみ侍るなり、うしろざまに心得たる事なり、もとより世中にすめるは君の恩徳なり、それを忘れて猶望を高くして、世をも君をもうらむる人のみ侍る、いとうたてしき事也、一世中にやくの侍べき人の、その身を卑下して、我身やすくはとおもふ、かへす〱口おしく頑しき事也、人と生れなば、万人に超、他人を助くべき願をおこして、他のため心をくだくを生々世々のおもひ出とはすべき也、菩薩といふもたゞ此ためなれば、凡夫の身として菩薩の願にひとしくせば、思ひ出なにごとか是にまさるべき、

書き下し

一君に仕へたてまつる事、かならずまづ恩を蒙て、それにしたがひて、わが身の忠をも奉公をもはげまさんと思ふ人のみ侍るなり、うしろざまに心得たる事なり、もとより世中にすめるは君の恩德なり、それを忘れて猶望を高くして、世をも君をもうらむる人のみ侍る、いとうたてしき事也、一世中にやくの侍べき人の、その身を卑下して、我身やすくはとおもふ、かへす〱口おしく頑しき事也、人と生れなば、萬人に超、他人を助くべき願をおこして、他のため心をくだくを生々世々のおもひ出とはすべき也、菩薩といふもたゞ此ためなれば、凡夫の身として菩薩の願にひとしくせば、思ひ出なにごとか是にまさるべき、

現代語訳

主君にお仕えすることについて、まず恩を受け、それに応じて自分の忠義や奉公に励もうと思う人ばかりがいます。これは順序を逆に心得ているのです。そもそも世に生きていられるのは、主君の恩徳です。それを忘れて、なお望みを高くし、世をも主君をも恨む人ばかりがいるのは、まことに嘆かわしいことです。また、世の役に立つはずの人が、わが身を卑下して、自分さえ安楽ならと思うのは、返す返す残念でかたくななことです。人と生まれたからには、万人に超え、他人を助けようという願いを起こし、他のために心を砕くことを、生々世々の思い出とすべきです。菩薩というのもただこのためですから、凡夫の身であっても菩薩の願に等しくなれば、これに勝る思い出がどこにありましょうか。

解説

奉公は恩を受けてからではなく、すでに受けている恩に気づくところから始まる、と義将は順序の逆転を戒めます。さらに、能力のある人が自分の安楽だけを望んで卑下するのを惜しみ、他人を助ける願いを持てと勧めます。恩賞や待遇を先に求める姿勢への戒めは、現代の職場にも通じます。管理職は、まず自分が組織や仲間から受けているものを自覚し、先に貢献する姿勢を示すことで、部下にも同じ順序を伝えられます。

この章句が説くこと

忠義奉公恩順序利他菩薩の願

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