武士訓 / 卷五・第2段
大極うごひて陰陽を生じ。陰陽合して萬物を生ず。もろ〱の事に。此理なきことあたはず。武術にたとえていへば。太刀をひつさげたる所一大極なり。敵とむかひたてる所陰陽なり。打あはせたる所。陰陽合したるなり。萬物の化生は。たがひのこゝろにあるなり。
新字:大極うごひて陰陽を生じ。陰陽合して万物を生ず。もろ〱の事に。此理なきことあたはず。武術にたとえていへば。太刀をひつさげたる所一大極なり。敵とむかひたてる所陰陽なり。打あはせたる所。陰陽合したるなり。万物の化生は。たがひのこゝろにあるなり。
書き下し
大極うごひて陰陽を生じ。陰陽合して萬物を生ず。もろ〱の事に。此理なきことあたはず。武術にたとえていへば。太刀をひつさげたる所一大極なり。敵とむかひたてる所陰陽なり。打あはせたる所。陰陽合したるなり。萬物の化生は。たがひのこゝろにあるなり。
現代語訳
太極が動いて陰陽を生じ、陰陽が合して万物を生ずる。あらゆる事に、この理がないことはない。武術にたとえて言えば、太刀を引っさげた所が一太極である。敵と向かい立つ所が陰陽である。打ち合わせた所は、陰陽が合したのである。万物の化生は、互いの心にある。
解説
宇宙の生成の理を、剣の立ち合いに当てはめた段です。太刀を提げた状態が太極、敵と向き合う所が陰陽、打ち合う所が陰陽の合、と段階に重ねます。そして、万物の化生、つまりものごとの成り行きは、互いの心にあると結びます。あらゆる事にこの理があるという言い方は、儒学の語彙を借りた説明で、眼目は、対峙は一方だけでは成り立たず、相手との関わりの中で結果が生まれるという点です。交渉や商談も、自分の備えと相手の出方が合わさって初めて展開します。結果を自分だけでは決められないと知ることが、構えの落ち着きにつながります。
この章句が説くこと
太極陰陽対峙化生立ち合い武士訓
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