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武士訓 / 卷四・第10段

共人むつまじくまじまるはよけれども。まじはりの道あしければ用にたらず。たま〱坐につらなりて。惡にそまらぬものあれば。異風なり氣隨なりと。うとみにくむにより。わかきものは。まじえられぬをかなしみ。こゝろにはあしゝと思へども。まげて彼風にしたがふあり。左あれば。惡にはうつりやすきならひにて。後にはすこしもかはらぬ白痴者となるなり。

新字:共人むつまじくまじまるはよけれども。まじはりの道あしければ用にたらず。たま〱坐につらなりて。悪にそまらぬものあれば。異風なり気随なりと。うとみにくむにより。わかきものは。まじえられぬをかなしみ。こゝろにはあしゝと思へども。まげて彼風にしたがふあり。左あれば。悪にはうつりやすきならひにて。後にはすこしもかはらぬ白痴者となるなり。

書き下し

共人むつまじくまじまるはよけれども。まじはりの道あしければ用にたらず。たま〱坐につらなりて。惡にそまらぬものあれば。異風なり氣隨なりと。うとみにくむにより。わかきものは。まじえられぬをかなしみ。こゝろにはあしゝと思へども。まげて彼風にしたがふあり。左あれば。惡にはうつりやすきならひにて。後にはすこしもかはらぬ白痴者となるなり。

現代語訳

人とむつまじく交わるのは良いが、交わりの道が悪ければ役に立たない。たまたま席に連なって悪に染まらない者がいると、変わり者だ、気ままだと言って疎み憎むので、若い者は仲間に入れてもらえないのを悲しみ、心では悪いと思いながら、心を曲げてその風に従う者がいる。そうなれば、悪には移りやすいのが常であって、のちには少しも違わない愚か者となってしまう。

解説

巻四の主題である交わりのうち、悪い仲間に同調していく流れを描いた段です。染まらない者は「変わり者」「気ままだ」と疎まれ、若い者は仲間はずれを悲しんで、心では悪いと思いつつ合わせるうちに、ついには周りと少しも違わない者になる、と述べます。染まらないことよりも、染まっていく途中の心の動きを見ている点が鋭いところです。職場でも、違和感を覚えながら周囲に合わせた小さな妥協が、いつの間にか当たり前になることがあります。特に若手は孤立を恐れて声を上げにくいので、管理職は異論を言う人が浮かない空気をつくる責任があります。

この章句が説くこと

交わり同調悪習若者孤立武士訓

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