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武士訓 / 卷三・第23段

わが家に久しくつかえて。わかきときよくつとめたるものならば。とし老て用に足がたくとも。あはれみてはごくむべし。昔魏田子方出見老馬干野問曰此何馬也。御者曰。故公家畜也。罷不能爲用。故出放之。子方曰。少盡其力。而老棄其身。而仁者不爲也。束帛贖之。窮士聞之歸心焉とある。其こゝろ相おなじ。

新字:わが家に久しくつかえて。わかきときよくつとめたるものならば。とし老て用に足がたくとも。あはれみてはごくむべし。昔魏田子方出見老馬干野問曰此何馬也。御者曰。故公家畜也。罷不能為用。故出放之。子方曰。少尽其力。而老棄其身。而仁者不為也。束帛贖之。窮士聞之帰心焉とある。其こゝろ相おなじ。

書き下し

わが家に久しくつかえて。わかきときよくつとめたるものならば。とし老て用に足がたくとも。あはれみてはごくむべし。昔魏田子方出見老馬干野問曰此何馬也。御者曰。故公家畜也。罷不能爲用。故出放之。子方曰。少盡其力。而老棄其身。而仁者不爲也。束帛贖之。窮士聞之歸心焉とある。其こゝろ相おなじ。

現代語訳

自分の家に長く仕え、若いときによく務めた者であれば、年老いて役に立ちがたくなっても、憐れんで養うべきです。昔、魏の田子方が出かけて、老いた馬が野に捨てられているのを見て、「これは何の馬か」と尋ねました。御者が「もとの公家で飼っていた馬です。疲れて役に立たなくなったので、放しました」と答えると、子方は言いました。「若いときにその力を尽くさせておきながら、老いてその身を棄てる。それは仁者のしないことだ」。束帛でこれを贖いました。窮士はこれを聞いて、心を寄せたとあります。その心は同じです。

解説

この段は、長く仕えた者は、年老いて役に立ちにくくなっても憐れんで養え、と説きます。魏の田子方は、野に捨てられた老馬を見て、若いときに力を尽くさせて老いて棄てるのは仁者のすることではないと言い、束帛で買い戻しました。窮士はこれを聞いて心を寄せたと、本文は結びます。馬の話を人に重ねる点に、当時の価値観が現れていますが、仕えた年月を尊ぶという筋は変わりません。いまの職場でも、長く貢献した人の処遇は、現役の社員が自分の将来を重ねて見ています。役割が変わった人にどう報いるかは、組織への信頼を左右するので、日頃の対応が問われます。

この章句が説くこと

恩義老馬田子方処遇長年の功武士訓

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