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武士訓 / 卷一・第19段

古語に孝は妻子に衰ふといへるごとく。今の世にさばかり父母によくつかふると見えし者の。妻子にひかれて。うとくなりゆくおほし。いにしへも此等のものを。倚門の望疎にして。結髮の情あつしとそしれり。

新字:古語に孝は妻子に衰ふといへるごとく。今の世にさばかり父母によくつかふると見えし者の。妻子にひかれて。うとくなりゆくおほし。いにしへも此等のものを。倚門の望疎にして。結髪の情あつしとそしれり。

書き下し

古語に孝は妻子に衰ふといへるごとく。今の世にさばかり父母によくつかふると見えし者の。妻子にひかれて。うとくなりゆくおほし。いにしへも此等のものを。倚門の望疎にして。結髮の情あつしとそしれり。

現代語訳

古語に「孝は妻子に衰える」というように、今の世に、あれほど父母によく仕えると見えた者が、妻子に引かれて疎遠になっていく例が多いものです。昔も、こうした者を、門に倚って待つ親の望みには疎く、妻との情は厚い、とそしりました。

解説

孝は妻子に衰える、という古語を引き、妻子を持った後に親への思いが薄れる人が多いと指摘する短い段です。かつても、そうした人を、親が門に寄って帰りを待つ思いには疎く、結髪の妻への情は厚い、とそしったと述べます。親と妻子を対立させる書き方は当時の家の考え方によります。現代に引き寄せれば、家庭や仕事が忙しくなるほど、もとからある縁が後回しになるという、誰にでも起きる傾向への注意と読めます。親や古い恩人との関係を点検する機会になり、部下の家庭事情に想像を向ける材料にもなります。

この章句が説くこと

孝妻子疎遠親への思い縁武士訓

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