武士訓 / 卷三・第9段
物をあまりにすみやかにと思ひぬれば。かへつてつまづくのうれえあり。むかし細川勝元のもとめによつて。太田持資。「短慮不成功」といふこゝろをよめる。「いそがずばぬれざらましをたび人のあとよりはるゝ野路のむらさめ」。
書き下し
物をあまりにすみやかにと思ひぬれば。かへつてつまづくのうれえあり。むかし細川勝元のもとめによつて。太田持資。「短慮不成功」といふこゝろをよめる。「いそがずばぬれざらましをたび人のあとよりはるゝ野路のむらさめ」。
現代語訳
物事をあまりに早く運ぼうと思うと、かえってつまずく心配があります。昔、細川勝元に求められて、太田持資が「短慮不成功」という心を歌に詠みました。「急がなければ濡れずにすんだものを、旅人よ、あとから晴れていく野路のにわか雨に降られてしまった」。
解説
この段は、事を急ぎすぎるとかえってつまずく、と述べます。例に引かれるのは、細川勝元の求めに応じて太田持資が「短慮不成功」の心を詠んだ歌です。歌が描くのは、急がなければ濡れずにすんだものを、あとから晴れていく通り雨に降られた旅人の姿です。短慮とは、先を見通さずに答えを急ぐ浅い考えのことでしょう。仕事でも、納期や成果に追われて手順を飛ばし、やり直しでかえって時間を失う場面は少なくありません。部下の育成も、早く一人前にしようと焦るほど遠回りになることがあります。動き出す前に一度立ち止まり、先の天気を確かめる習慣が、結局は近道になります。
この章句が説くこと
短慮不成功急がば回れ太田持資見通し焦り武士訓
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