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大和俗訓 / 巻之四・心術下

一萬の事、つらつら思案して、後のあやまりなく、悔なからん事をはかるべし。思案なくして、いかりと慾を去らざれば、後の災となる。是智者のしわざにあらず。事を思案せずして、かるがるしく行へば、必あやまりあり。後悔あり。もし急なる事あらば、ことさらよく思案して、詳かに行ふべし。此の如くせば、後のあやまりなかるべし。いそぎて心さわがしく、靜ならざれば、思案なくして、必あやまりあり。悔あり。

新字:一万の事、つらつら思案して、後のあやまりなく、悔なからん事をはかるべし。思案なくして、いかりと慾を去らざれば、後の災となる。是智者のしわざにあらず。事を思案せずして、かるがるしく行へば、必あやまりあり。後悔あり。もし急なる事あらば、ことさらよく思案して、詳かに行ふべし。此の如くせば、後のあやまりなかるべし。いそぎて心さわがしく、静ならざれば、思案なくして、必あやまりあり。悔あり。

書き下し

一万の事、つらつら思案して、後のあやまりなく、悔なからん事をはかるべし。思案なくして、いかりと慾を去らざれば、後の災となる。是智者のしわざにあらず。事を思案せずして、かるがるしく行へば、必あやまりあり。後悔あり。もし急なる事あらば、ことさらよく思案して、詳かに行ふべし。此の如くせば、後のあやまりなかるべし。いそぎて心さわがしく、静ならざれば、思案なくして、必あやまりあり。悔あり。

現代語訳

何事もよくよく思案して、後の誤りがなく、悔いがないようにと計るべきです。思案もせずに、怒りと欲を去らなければ、後の災いとなります。これは知恵ある者のしわざではありません。事を思案せずに軽々しく行えば、必ず誤りがあり、後悔があります。もし急なことがあれば、ことさらよく思案して、くわしく行いなさい。このようにすれば、後の誤りはないでしょう。急いで心が騒がしく、静かでなければ、思案がなくなり、必ず誤りがあり、悔いがあります。

解説

思案の大切さを繰り返し説く益軒らしい一条です。とくに「急なる事あらば、ことさらよく思案して」という言葉は、急ぎの案件ほど慎重にという逆説的な知恵で、「急がば回れ」にも通じます。怒りや欲がからんでいるときはなおさら判断を誤りやすいとも指摘しています。締め切りに追われてメールを送り間違えたり、感情的な返信をして後悔したりするのは現代でもよくあることです。急ぐときほど一度立ち止まる習慣が、大きな失敗を防いでくれます。

この章句が説くこと

思案後悔慎重怒り欲

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