大和俗訓 / 巻之八・応接
一對しがたき人に對せば、彌厚かるべし。なしがたき事をなさば、彌緩なるべし。急なることに對せば、彌靜なるべし。是古人の言なり。或人祐筆にふみを書かするに、急用のことなり、靜かに書くべしといへり。又俗語に、急がばまはれといへるも、其意同じ。
新字:一対しがたき人に対せば、弥厚かるべし。なしがたき事をなさば、弥緩なるべし。急なることに対せば、弥静なるべし。是古人の言なり。或人祐筆にふみを書かするに、急用のことなり、静かに書くべしといへり。又俗語に、急がばまはれといへるも、其意同じ。
書き下し
一対しがたき人に対せば、弥厚かるべし。なしがたき事をなさば、弥緩なるべし。急なることに対せば、弥静なるべし。是古人の言なり。或人祐筆にふみを書かするに、急用のことなり、静かに書くべしといへり。又俗語に、急がばまはれといへるも、其意同じ。
現代語訳
向き合いにくい人に向き合うなら、いよいよ厚くしなさい。なしがたいことをするなら、いよいよゆるやかにしなさい。急なことに向き合うなら、いよいよ静かにしなさい。これは古人の言葉です。ある人が祐筆に手紙を書かせるのに、急用のことだから静かに書け、と言いました。また俗語に「急がば回れ」と言うのも、その意味は同じです。
解説
扱いにくい人ほど手厚く、難しいことほどゆっくり、急ぐことほど落ち着いて、という三つの逆説的な心得です。急ぎの手紙だからこそ落ち着いて書けと命じた人の話は、焦って書き損じれば余計に時間がかかることをよく知っていたからでしょう。「急がば回れ」はもとは室町時代の連歌師宗長の歌に由来するとされることわざです。締め切り間際ほどミスが増えることは誰もが経験しています。急ぐときこそ深呼吸して丁寧に進めることが、結局は一番の近道なのです。
この章句が説くこと
急がば回れ静慎重応接仕事
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