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武士訓 / 卷三・第3段

士たらんものは。分限相應の人馬をもち。武具をたくはえ。軍學をきはめ。武術をならふべし。弓馬劔術拔刀鎗鳥銃柔術等なり。俗劔術を兵法といへるは非なり。兵法とは。軍法の事をいふ。鐵炮と書は非なり。鐵砲と書べし。又中華の書に拳法手搏とあるを。俗間やわらと訓は。大に非なり。拳法手搏は中華より出。今世にいふ捕縛なり。柔術は。本朝にて近世紀州の關口氏よりはじまる。關口氏は古今の名人にて。日本に其名高し。

新字:士たらんものは。分限相応の人馬をもち。武具をたくはえ。軍学をきはめ。武術をならふべし。弓馬剣術抜刀鎗鳥銃柔術等なり。俗剣術を兵法といへるは非なり。兵法とは。軍法の事をいふ。鉄炮と書は非なり。鉄砲と書べし。又中華の書に拳法手搏とあるを。俗間やわらと訓は。大に非なり。拳法手搏は中華より出。今世にいふ捕縛なり。柔術は。本朝にて近世紀州の関口氏よりはじまる。関口氏は古今の名人にて。日本に其名高し。

書き下し

士たらんものは。分限相應の人馬をもち。武具をたくはえ。軍學をきはめ。武術をならふべし。弓馬劔術拔刀鎗鳥銃柔術等なり。俗劔術を兵法といへるは非なり。兵法とは。軍法の事をいふ。鐵炮と書は非なり。鐵砲と書べし。又中華の書に拳法手搏とあるを。俗間やわらと訓は。大に非なり。拳法手搏は中華より出。今世にいふ捕縛なり。柔術は。本朝にて近世紀州の關口氏よりはじまる。關口氏は古今の名人にて。日本に其名高し。

現代語訳

士たる者は、分限に相応した人馬を持ち、武具を蓄え、軍学を極め、武術を習うべきです。弓、馬、剣術、抜刀、槍、鳥銃、柔術などです。俗に剣術を兵法と言うのは誤りです。兵法とは、軍法のことを言います。鉄炮と書くのは誤りで、鉄砲と書くべきです。また、中華の書に拳法・手搏とあるのを、俗間でやわらと訓むのは大きな誤りです。拳法・手搏は中華から出たもので、今の世にいう捕縛です。柔術は、わが国では近世、紀州の関口氏から始まりました。関口氏は古今の名人で、日本にその名が高いのです。

解説

この段は、士が身分に応じて備えるべきものと習うべき武術を挙げ、あわせて呼び方の誤りを正しています。剣術を兵法と呼ぶのは誤りで、兵法は軍法のことだ、鉄炮ではなく鉄砲と書く、拳法・手搏を「やわら」と訓むのも誤りで、柔術は紀州の関口氏に始まる、といった具合です。語の使い分けに細かくこだわる語り口は、言葉と実質を結びつけて理解せよという姿勢の表れとも読めます。いまの職場でも、「マネジメント」「リーダーシップ」といった言葉を曖昧なまま使うと、備えるべきものがぼやけます。自分の役割に必要な力を、言葉の意味まで確かめて整える手がかりになります。

この章句が説くこと

分限相応武術兵法言葉の正確さ備え武士訓

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