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武士訓 / 卷二・第16段

俗間の諺に。唐士の虎は毛をおしみ。和朝の武士は名を惜むといへり。名をおしむといへるも。利をこのむといふよりはよろしけれども。おなじくは義を守るといひたし。武夫たらんものは。一言もつてつゝしまずんば有べからず。

書き下し

俗間の諺に。唐士の虎は毛をおしみ。和朝の武士は名を惜むといへり。名をおしむといへるも。利をこのむといふよりはよろしけれども。おなじくは義を守るといひたし。武夫たらんものは。一言もつてつゝしまずんば有べからず。

現代語訳

世間の諺に、唐土の虎は毛を惜しみ、和朝の武士は名を惜しむ、と言います。名を惜しむというのも、利を好むというよりはよいのですが、同じことなら義を守ると言いたいものです。武夫たる者は、一言であっても慎まずにはいられません。

解説

この短い段は、名を惜しむことを、利を好むことより上に置きつつ、さらに義を守るほうへ引き上げています。虎は毛皮を惜しみ、武士は名を惜しむという諺は、世間体を保とうとする心を言い当てています。蟠龍は、名を惜しむ心を否定はしませんが、世間の評判を気にする動機は不安定なので、義という基準に置き換えたいと述べます。一言も慎むべしという結びは、前段までの言行への戒めに通じます。評判を守るための行動と、筋を守るための行動を分けて考えるのは、今の組織の意思決定でも役立つ見方です。

この章句が説くこと

名を惜しむ義を守る評判慎み一言武士訓

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