武士訓 / 卷一・第17段
士は節に臨み。義によりて。身を塵芥になぞらへ。命を鴻毛よりかろんずべし。是父母の遺體をはづかしめざるなり。しかれどもたけくいさめる人の道しらぬは。一朝のいかりに無益の死をとぐる多し。命をすつるのみを勇武とおぼえたるは。古人も盲虎にひとしとそしれり。
新字:士は節に臨み。義によりて。身を塵芥になぞらへ。命を鴻毛よりかろんずべし。是父母の遺体をはづかしめざるなり。しかれどもたけくいさめる人の道しらぬは。一朝のいかりに無益の死をとぐる多し。命をすつるのみを勇武とおぼえたるは。古人も盲虎にひとしとそしれり。
書き下し
士は節に臨み。義によりて。身を塵芥になぞらへ。命を鴻毛よりかろんずべし。是父母の遺體をはづかしめざるなり。しかれどもたけくいさめる人の道しらぬは。一朝のいかりに無益の死をとぐる多し。命をすつるのみを勇武とおぼえたるは。古人も盲虎にひとしとそしれり。
現代語訳
士は節に臨み、義によって、身を塵芥になぞらえ、命を鴻毛より軽んじるべきです。これは父母の遺体を辱めないことです。けれども、猛々しく勇ましい人が道を知らないと、一朝の怒りで無益な死を遂げる者が多いものです。命を捨てることだけを勇武と覚えているのは、古人も盲虎に等しいとそしりました。
解説
節と義のために命を軽んじる覚悟を述べつつ、命を捨てることだけを勇と思う者を盲虎と戒める段です。命を軽んじるのは父母の遺体を辱めないためで、道を知らない猛々しい人が一朝の怒りで無益な死を遂げる、という指摘が中心です。勇気とは、捨てることの大きさではなく、何のために使うかで決まる、という考え方です。現代の仕事では命を懸ける場面はまれですが、感情にまかせた辞表や、勢いだけの強行は同じ型の失敗です。大事な場面ほど、義にかなうかを先に問い、怒りの勢いでは動かない自制に引き寄せられます。
この章句が説くこと
節と義鴻毛盲虎勇武無益な死武士訓
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