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武士訓 / 卷二・第6段

古語に。衣垢つきたるをあらはず。器かけたるを補ざるをば。人に見することをはづれども。行あかつきたるをあらはず。德かけたるを補ずして。天に對しても。恥ることなきはなんぞやといへり。おもふに世に刀をためし。甲をためすものありといへども。いまだ心をためし。身をためすものをきかず。外をしつて內をわきまへず。本をすてゝ末をとる。まどえるにふらずや。

新字:古語に。衣垢つきたるをあらはず。器かけたるを補ざるをば。人に見することをはづれども。行あかつきたるをあらはず。徳かけたるを補ずして。天に対しても。恥ることなきはなんぞやといへり。おもふに世に刀をためし。甲をためすものありといへども。いまだ心をためし。身をためすものをきかず。外をしつて内をわきまへず。本をすてゝ末をとる。まどえるにふらずや。

書き下し

古語に。衣垢つきたるをあらはず。器かけたるを補ざるをば。人に見することをはづれども。行あかつきたるをあらはず。德かけたるを補ずして。天に對しても。恥ることなきはなんぞやといへり。おもふに世に刀をためし。甲をためすものありといへども。いまだ心をためし。身をためすものをきかず。外をしつて內をわきまへず。本をすてゝ末をとる。まどえるにふらずや。

現代語訳

古い言葉に、衣の垢がついていても洗わず、器が欠けていても繕わないのを、人に見られることは恥じるのに、行いに垢がついていても洗わず、徳が欠けていても補わないまま、天に対して恥じることがないのはなぜか、とあります。思うに、世には刀を試し、甲冑を試す者はいても、心を試し、身を試す者がいるとはまだ聞きません。外を知って内をわきまえず、本を捨てて末を取る。これは迷っているのではないでしょうか。

解説

汚れた衣や欠けた器は人目を気にして直すのに、行いの垢や徳の欠けは放っておく、という対比から始まります。蟠龍はさらに、刀や甲冑の出来は試すのに、心と身を試す者はいないと嘆き、外を知って内を知らないのは本末を取り違えた迷いだと述べます。「本」は心と行い、「末」は道具や外見のことです。今の仕事でいえば、資料の見栄えや肩書の体裁には気を配っても、自分の判断の癖や言動の質を点検する機会は少ない、ということに重なります。管理職こそ、成果物だけでなく、自分の心と行いを定期的に試す場を意識して持つ必要があります。

この章句が説くこと

本末内と外行いの垢自己点検徳武士訓

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