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武士訓 / 卷一・第20段

父母なふしては。一しほに兄弟ほどしたしむべきものはあらぬに。世俗やゝもすれば。親の財寶をあらそひて。中あしくなり。妯娌の不挨拶により遠るものあり。唐の高祖妃嬪姦臣のことばにまどひ。兄弟を配流せしを。國民うたにつくる。其うたに。一尺布尙可縫。一斗粟尙可舂。兄弟二人不相容とうたひてそしれり。よくつゝしみて。友愛すべし。

新字:父母なふしては。一しほに兄弟ほどしたしむべきものはあらぬに。世俗やゝもすれば。親の財宝をあらそひて。中あしくなり。妯娌の不挨拶により遠るものあり。唐の高祖妃嬪姦臣のことばにまどひ。兄弟を配流せしを。国民うたにつくる。其うたに。一尺布尚可縫。一斗粟尚可舂。兄弟二人不相容とうたひてそしれり。よくつゝしみて。友愛すべし。

書き下し

父母なふしては。一しほに兄弟ほどしたしむべきものはあらぬに。世俗やゝもすれば。親の財寶をあらそひて。中あしくなり。妯娌の不挨拶により遠るものあり。唐の高祖妃嬪姦臣のことばにまどひ。兄弟を配流せしを。國民うたにつくる。其うたに。一尺布尙可縫。一斗粟尙可舂。兄弟二人不相容とうたひてそしれり。よくつゝしみて。友愛すべし。

現代語訳

父母が亡くなったら、ことさら兄弟ほど親しむべきものはないのに、世間はともすれば、親の財宝を争って仲が悪くなり、兄弟の妻どうしの不愛想によって疎遠になる者もいます。唐の高祖は、妃嬪や姦臣の言葉に惑い、兄弟を配流したので、国民が歌に作りました。その歌に「一尺の布でもなお縫い合わせることができる。一斗の粟でもなお搗いて分けることができる。兄弟二人が相容れないとは」と歌ってそしりました。よくつつしんで、友愛すべきです。

解説

親が亡くなったあと、兄弟ほど親しむべきものはないのに、財産争いや兄弟の妻同士の不愛想で疎遠になる例を挙げる段です。唐の高祖が姦臣の言葉に惑って兄弟を配流し、国民が歌で皮肉った話を引き、一尺の布も一斗の粟も分け合えるのに兄弟は相容れないのか、と問います。身内の争いは、財産や取り巻きの口出しという外からの刺激で起こる、という観察があります。家族経営や同族の会社では特に起こりやすい問題です。利害が絡む場面ほど、第三者の言葉に流されず、本人同士で直接話す習慣を持つという実践に引き寄せられます。

この章句が説くこと

兄弟友愛財産争い身内の争い一尺の布武士訓

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