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武士道 / 第五章 仁・愛不忍の心・親父政治と叔父政治

武士道は實に親父バターナル、ガスーメント政治を保持す。而して親文治治とは、外人の之を稱するよりは、其意義更に深きものあり、又た政府と國民との利害關アヴアンキユラー、ガバーメントアンクル、の叔父政治と逈係頗る淺き、『アンクル、サム』(ム叔父とは米國の〓稱)サム即ちサかに其旨を殊にす。壓制政治と、親父政治との異る所は是なり、即ち彼に在りては人民已むを得ずして憎服し、此に在りてはボルクの云へるが如くに、『服從を誇り、品位を保ちて歸服し、隷役の中にありとも、其心に、〓々たる自由の精神の活在せる從屬』をなすものなり。古人は英國王を以て、『臣民屢ば謀叛纂奪を謀るが故に惡魔の王なり】と稱し、又た佛國王を以て、『人民の苛稅收歛に苦しむが故に、驢の王〇なり』と稱し、而して西斑牙王に與ふるには、『其民の服從を甘んずるが故に人の王なり』との稱を以てしたるがされど歧說は姑く之を措け。道德と專制權との二語は、アングロサクソン人民の以て、氷炭相容れざるの感をなすものならん。

新字:武士道は実に親父バターナル、ガスーメント政治を保持す。而して親文治治とは、外人の之を称するよりは、其意義更に深きものあり、又た政府と国民との利害関アヴアンキユラー、ガバーメントアンクル、の叔父政治と逈係頗る浅き、『アンクル、サム』(ム叔父とは米国の〓称)サム即ちサかに其旨を殊にす。圧制政治と、親父政治との異る所は是なり、即ち彼に在りては人民已むを得ずして憎服し、此に在りてはボルクの云へるが如くに、『服従を誇り、品位を保ちて帰服し、隷役の中にありとも、其心に、〓々たる自由の精神の活在せる従属』をなすものなり。古人は英国王を以て、『臣民屡ば謀叛纂奪を謀るが故に悪魔の王なり】と称し、又た仏国王を以て、『人民の苛税収歛に苦しむが故に、驢の王〇なり』と称し、而して西斑牙王に与ふるには、『其民の服従を甘んずるが故に人の王なり』との称を以てしたるがされど歧説は姑く之を措け。道徳と専制権との二語は、アングロサクソン人民の以て、氷炭相容れざるの感をなすものならん。

書き下し

武士道は実に親父(パターナル・ガヴァメント)政治を保持す。而して親父政治とは、外人の之を称するよりは、其意義更に深きものあり、又た政府と国民との利害関係頗る浅き、『アンクル・サム』(即ちサム叔父とは米国の(俗)称)の叔父(アヴァンキュラー・ガヴァメント)政治と逈かに其旨を殊にす。圧制政治と、親父政治との異る所は是なり、即ち彼に在りては人民已むを得ずして慴服し、此に在りてはバークの云へるが如くに、『服従を誇り、品位を保ちて帰服し、隷役の中にありとも、其心に、(昂)々たる自由の精神の活在せる従属』をなすものなり。古人は英国王を以て、『臣民しばしば謀叛簒奪を謀るが故に悪魔の王なり』と称し、又た仏国王を以て、『人民の苛税収斂に苦しむが故に、驢の王なり』と称し、而して西班牙王に与ふるには、『其民の服従を甘んずるが故に人の王なり』との称を以てしたるが、されど岐説はしばらく之を措け。道徳と専制権との二語は、アングロサクソン人民の以て、氷炭相容れざるの感をなすものならん。

現代語訳

武士道はまことに親父政治(パターナル・ガヴァメント、父のような温情による統治)を保ってきた。そして親父政治とは、外国人がそう呼んでいる以上に深い意味をもつものであり、また政府と国民との利害の結びつきがきわめて浅い、「アンクル・サム」(サムおじさんとはアメリカ合衆国の(俗)称)の叔父政治(アヴァンキュラー・ガヴァメント)とは、その趣旨がはるかに異なる。圧制政治と親父政治の違いはここにある。すなわち前者では人民はやむをえず恐れて服従し、後者では、バーク(英国の政治思想家)が言ったように、「服従を誇りとし、品位を保って従い、隷属の中にあってもその心には(昂然)たる自由の精神が生きている従属」をするのである。昔の人は英国王を「臣下がたびたび謀反や王位の簒奪をたくらむので、悪魔の王である」と呼び、フランス王を「人民が重い税の取り立てに苦しんでいるので、ロバの王である」と呼び、そしてスペイン王には「その民が進んで服従するので、人間の王である」という呼び名を与えた。だが、この脇道の話はしばらく置こう。道徳と専制権という二つの言葉は、アングロサクソンの人々には、氷と炭のように相容れないものと感じられるだろう。

解説

第五章は仁を論じ、君主の権力と仁の関係に踏み込みます。新渡戸は武士道の政治を親父政治、つまり父が子を思うような温情の統治だと説明し、アメリカ人が政府をアンクル・サムと呼ぶ叔父政治とは違うと言います。叔父は子に深い責任を負わず、利害でつながるだけだという対比です。さらにフランス革命を批判した英国の思想家バークの、服従の中にも自由の精神が生きているという言葉を引き、圧制との違いを示します。専制と道徳は両立しないと感じる英米の読者に向けて、権力が仁で和らげられる形があることを説明しようとしているのです。あなたが人の上に立つとき、恐れで従わせていますか、それとも誇りを持って従ってもらえていますか。

この章句が説くこと

仁親父政治専制服従バーク

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