文子 / 上德
老子曰:鼓不藏聲,故能有聲,鏡不沒形,故能有形,金石有聲,不動不鳴,管簫有音,不吹無聲。是以聖人內藏,不為物唱,事來而制,物至而應。天行不已,終而復始,故能長久,輪復其所轉,故能致遠,天行一不差,故無過矣。天氣下,地氣上,陰陽交通,萬物齊同,君子用事,小人消亡,天地之道也。天氣不下,地氣不上,陰陽不通,萬物不昌,小人得勢,君子消亡,五穀不植,道德內藏。天之道,損盈益寡,地之道,損高益下,鬼神之道,驕溢與下,人之道,多者不與,聖人之道,卑而莫能上也。天明日明,而後能照四方,君明臣明,域中乃安,有四明,乃能長久,明其施明者,明其化也。天道為丈,地道為理,一為之和,時為之使,以成萬物,命之曰道。大道坦坦,去身不遠,脩之於身,其德乃真,脩之於物,其德不絕。
新字:老子曰:鼓不蔵声,故能有声,鏡不没形,故能有形,金石有声,不動不鳴,管簫有音,不吹無声。是以聖人内蔵,不為物唱,事来而制,物至而応。天行不已,終而復始,故能長久,輪復其所転,故能致遠,天行一不差,故無過矣。天気下,地気上,陰陽交通,万物斉同,君子用事,小人消亡,天地之道也。天気不下,地気不上,陰陽不通,万物不昌,小人得勢,君子消亡,五穀不植,道徳内蔵。天之道,損盈益寡,地之道,損高益下,鬼神之道,驕溢与下,人之道,多者不与,聖人之道,卑而莫能上也。天明日明,而後能照四方,君明臣明,域中乃安,有四明,乃能長久,明其施明者,明其化也。天道為丈,地道為理,一為之和,時為之使,以成万物,命之曰道。大道坦坦,去身不遠,脩之於身,其徳乃真,脩之於物,其徳不絶。
書き下し
老子曰く、鼓は声を蔵せず、故に能く声有り。鏡は形を没せず、故に能く形有り。金石に声有るも、動かざれば鳴らず、管簫に音有るも、吹かざれば声無し。是を以て聖人は内に蔵し、物の為に唱えず、事来りて制し、物至りて応ず。天行くこと已まず、終わりて復た始まる。故に能く長久なり。輪の其の転ずる所に復るや、故に能く遠きに致る。天行くこと一も差わず、故に過ち無し。天気下り、地気上り、陰陽交通し、万物斉同し、君子事を用い、小人消亡するは、天地の道なり。天気下らず、地気上らず、陰陽通ぜず、万物昌えず、小人勢いを得、君子消亡し、五穀植らず、道徳内に蔵まる。天の道は、盈を損じて寡を益し、地の道は、高きを損じて下きを益し、鬼神の道は、驕溢を下に与え、人の道は、多き者は与えず、聖人の道は、卑くして能く上る莫きなり。天明らかなれば日明らかにして、而る後に能く四方を照らす。君明らかなれば臣明らかにして、域中乃ち安らかなり。四明有れば、乃ち能く長久なり。其の施すを明らかにする者は、其の化を明らかにするなり。天道は丈と為し、地道は理と為し、一は之が和を為し、時は之が使を為し、以て万物を成す。之を命けて道と曰う。大道は坦坦として、身を去ること遠からず。之を身に修むれば、其の徳乃ち真なり。之を物に修むれば、其の徳絶えず。
現代語訳
老子は言った。鼓は声を内に隠さない、だからよく声が出る。鏡は形を隠さない、だからよく形を映す。金石には音があるが、打たなければ鳴らず、管や簫には音があるが、吹かなければ声がない。そのため聖人は内に蔵し、物のために先に鳴らず、事が来て制し、物が至って応じる。天の運行は止まらず、終わってはまた始まる。だから長く久しい。車輪が元の位置に戻るから、遠くへ行ける。天の運行はひとつも狂わない、だから過ちがない。天の気が下り、地の気が上り、陰陽が交わって通じ、万物が調和し、君子が事を用い、小人が消えていくのは、天地の道である。天の気が下らず、地の気が上らず、陰陽が通じず、万物が栄えず、小人が勢いを得て、君子が消えていき、五穀が実らず、道徳が内に隠れる。天の道は、満ちたものを減らして足りないものを増やし、地の道は、高いものを減らして低いものを益し、鬼神の道は、驕り溢れるものを下に分け与え、人の道は、多い者は与えず、聖人の道は、低くいて誰もその上に出られない。天が明るければ日が明るく、そうして四方を照らせる。君が明るければ臣が明るく、領内は安らかになる。四つの明があれば、長く続く。施しを明らかにするのは、教化を明らかにすることである。天道を物差しとし、地道を条理とし、一を調和とし、時を使いとして、万物を成す。これを名づけて道という。大道は平らかで、身から遠くない。これを身に修めれば、その徳は真となり、これを物に修めれば、その徳は絶えない。
解説
この章句が説くこと
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孫子・九地篇諸侯の地三属し、先に至りて天下の衆を得る者を、衢地と為す。
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文子・自然老子曰く、天地の道は、徳を以て主と為し、道を之が命と為し、物は以て自ら正しくす。至微にして甚だ内にして、事を以て貴からず。故に功を待たずして立ち、位を以て尊しと為さず、名を待たずして顕れ、礼を須たずして荘に、兵を用いずして強し。故に道立ちて教えず、明らかに照らして察せず。道立ちて教えざるは、人の能を奪わざるなり。明らかに照らして察せざるは、其の事を害わざるなり。夫れ道を教うる者は、徳に逆い、物を害す。故に陰陽四時、金木水火土は、道を同じくして理を異にし、万物は情を同じくして形を異にす。智者は相い教えず、能者は相い受けず。故に聖人は法を立てて、以て民の心を導き、各おの自然ならしむ。故に生くる者は徳とせず、死する者は怨みなし。天地は不仁にして、万物を以て芻狗と為す。聖人は不仁にして、百姓を以て芻狗と為す。夫れ慈愛仁義は、近狭の道なり。狭き者は大に入りて迷い、近き者は遠きに行きて惑う。聖人の道は、大に入りて迷わず、遠きに行きて惑わず、常に虚にして自ら守り、以て極と為すべし。是を天徳と謂う。
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文子・道德聖人は之に法り、卑き者は自ら下る所以、退く者は自ら後る所以、倹なる者は自ら小なる所以、損なう者は自ら少なき所以なり。卑ければ則ち尊く、退けば則ち先んじ、倹なれば則ち広く、損なえば則ち大なり。此れ天道の成す所なり。夫れ道なる者は、徳の元、大の根、福の門、万物待ちて生じ、待ちて成り、待ちて寧し。夫れ道は、無為無形にして、内は以て身を修め、外は以て人を治め、功成り事立ちて、天と隣を為す。無為にして為さざる無く、其の情を知る莫く、其の真を知る莫きも、其の中に信有り。天子道有れば則ち天下服し、長く社稷を有ち、公侯道有れば則ち人民和睦し、其の国を失わず、士庶道有れば則ち其の身を全うし、其の親を保つ。強大も道有れば、戦わずして克ち、小弱も道有れば、争わずして得、事を挙ぐるに道有れば、功成りて福を得、君臣道有れば則ち忠恵あり、父子道有れば則ち慈孝あり、士庶道有れば則ち相愛す。故に道有れば則ち和し、道無ければ則ち苛なり。是に由りて之を観れば、道の人に於けるや、宜しからざる所無きなり。
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文子・上德老子曰く、道は無為を以て体有り。之を視れども其の形を見ず、之を聴けども其の声を聞かず、之を幽冥と謂う。幽冥とは、道を論ずる所以にして、道に非ざるなり。夫れ道とは、内に視て自ら反る。故に人は小学ばざれば大迷わず、小恵まざれば大愚ならず。流潦に鑑する莫く、止水に鑑す。其の保つを以てなり、止まりて外に蕩かず。月望にして日光を奪われ、陰は以て陽を承く可からず。日出でて星見ゆる可く、之と光を争う能わず。末は以て本より強かる可からず、枝は以て幹より大なる可からず。上重く下軽ければ、其の覆ること必ず易し。一淵に両蛟あらず、一雌に二雄あらず。一なれば即ち定まり、両なれば即ち争う。玉は山に在りて草木潤い、珠は淵に生じて岸枯れず。蚯蚓は筋骨の強、爪牙の利無けれども、上は咘堁を食い、下は黄泉を飲む。心を用うること一なればなり。清きの明らかなるは、杯水にても眸子を見る可く、濁れるの害は、河水にても太山を見ず。蘭芷は莫服を為さずして芳しからざらず、舟は江海に浮かび莫乗を為さずして沈まず、君子は道を行いて莫知を為さずして止まず。性の有るなり。清を以て濁に入れば必ず困辱し、濁を以て清に入れば必ず覆傾す。天二気なれば即ち虹を成し、地二気なれば即ち泄れ蔵し、人二気なれば即ち病を生ず。陰陽は常なる能わず、且つ冬し且つ夏し、月は昼を知らず、日は夜を知らず。川広き者は魚大に、山高き者は木修く、地広き者は徳厚し。故に魚は餌無くして釣る可からず、獣は空器にして召す可からず。
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