文子 / 上德
使葉落者,風搖之也,使水濁者,物撓之也,璧鍰之器,礛之功也,莫邪斷割,砥礪之力也,蝱與驥致千里而不飛,無裹糧之資而不飢,狡兔得而獵犬烹,高鳥盡而良弓藏,名成功遂身退,天道然也。怒出於不怒,為出於不為,視於無有則得所見,聽於無聲則得所聞。飛鳥反鄉,兔走歸窟,狐死首丘,寒螿洋木,各依其所生也。水火相憎,鼎鬲在其間,五味以和,骨肉相愛也,讒人間之,父子相危也。犬豕不擇器而食,俞肥其體,故近死,鳳皇翔於千仞,莫之能致。推固百內而不能自椓,目見百步之外而不能見其眥。因高為山即安而不危,因下為池即淵深而魚鱉歸焉。溝也澇即溢,旱即枯,河海之源淵深而不竭,鱉無耳而目不可以蔽,精於明也,瞽無目而耳不可以蔽,精於聰也。混混之水濁,可以濯吾足乎?泠泠之水清,可以濯吾纓乎?絲之為縞也,或為冠,或為袜,冠則戴枝之,袜則足蹍之。金之勢勝木,一刃不能殘一林之木;
新字:使葉落者,風揺之也,使水濁者,物撓之也,璧鍰之器,礛之功也,莫邪断割,砥礪之力也,蝱与驥致千里而不飛,無裹糧之資而不飢,狡兔得而猟犬烹,高鳥尽而良弓蔵,名成功遂身退,天道然也。怒出於不怒,為出於不為,視於無有則得所見,聴於無声則得所聞。飛鳥反郷,兔走帰窟,狐死首丘,寒螿洋木,各依其所生也。水火相憎,鼎鬲在其間,五味以和,骨肉相愛也,讒人間之,父子相危也。犬豕不択器而食,兪肥其体,故近死,鳳皇翔於千仞,莫之能致。推固百内而不能自椓,目見百歩之外而不能見其眥。因高為山即安而不危,因下為池即淵深而魚鱉帰焉。溝也澇即溢,旱即枯,河海之源淵深而不竭,鱉無耳而目不可以蔽,精於明也,瞽無目而耳不可以蔽,精於聰也。混混之水濁,可以濯吾足乎?泠泠之水清,可以濯吾纓乎?糸之為縞也,或為冠,或為袜,冠則戴枝之,袜則足蹍之。金之勢勝木,一刃不能残一林之木;
書き下し
葉をして落たしむる者は、風の之を揺がすなり、水をして濁らしむる者は、物の之を撓すなり。璧鍰の器は、礛の功なり、莫邪の断割するは、砥礪の力なり。蝱と驥と千里に致るも、飛ばずして、糧を裹む資無きも飢えず。狡兔得られて猟犬烹られ、高鳥尽きて良弓蔵めらる。名成り功遂げて身退くは、天道の然るなり。怒りは不怒より出で、為すは不為より出づ。無有に視れば則ち見る所を得、無声に聴けば則ち聞く所を得。飛鳥は郷に反り、兎走りて窟に帰り、狐死して首を丘にし、寒螿は木に洋す。各々其の生ずる所に依るなり。水火相憎めども、鼎鬲其の間に在りて、五味以て和す。骨肉相愛すれども、讒人之を間つれば、父子相危うし。犬豕は器を択ばずして食い、愈々其の体を肥やし、故に死に近づく。鳳皇は千仞に翔けて、之を能く致す莫し。推固は百内にして自ら椓つ能わず、目は百歩の外を見て其の眥を見る能わず。高きに因りて山を為らば即ち安くして危うからず、下きに因りて池を為らば即ち淵深くして魚鱉帰す。溝は澇なれば即ち溢れ、旱なれば即ち枯る。河海の源は淵深くして竭きず。鱉は耳無くして目は以て蔽う可からず、明に精なればなり。瞽は目無くして耳は以て蔽う可からず、聡に精なればなり。混混の水濁らば、以て吾が足を濯う可きか。泠泠の水清ければ、以て吾が纓を濯う可きか。糸の縞と為るや、或いは冠と為り、或いは袜と為る。冠と為れば則ち戴きて之を枝し、袜と為れば則ち足にて之を蹍む。金の勢いは木に勝つも、一刃は一林の木を残う能わず。
現代語訳
葉を落とすのは、風がこれを揺らすからであり、水を濁らせるのは、物がこれをかき回すからである。璧や環の器は、砥石の働きで磨かれ、莫邪の剣がよく切れるのは、砥ぎ石の力による。アブと駿馬は共に千里に行けるが、アブは飛ばず、糧を包む蓄えがなくても飢えない。すばしこい兎が捕られると猟犬は煮られ、高く飛ぶ鳥がいなくなると良い弓はしまわれる。名が成り功が遂げられて身を退くのは、天道の自然なあり方である。怒りは怒らないところから出、為すことは為さないところから出る。無いところを見れば見るべきものを得、音のないところに聴けば聞くべきものを得る。飛ぶ鳥は故郷に帰り、兎は走って巣穴に帰り、狐は死ぬとき首を生まれた丘に向け、寒蝉は木にとまる。それぞれ自分の生まれたところに寄るのである。水と火は憎み合うが、鼎や鬲がその間にあって、五つの味が和す。肉親は愛し合うが、讒言する者がその間に入れば、父子も互いに危うくなる。犬や豚は器を選ばずに食べ、ますます肥えて死に近づく。鳳凰は千仞の高さを飛び、誰も捕まえられない。力持ちは百の内に入っても自分の背中を打てず、目は百歩先を見ても自分のまつげは見えない。高いところに沿って山を造れば安定して危うくなく、低いところに沿って池を掘れば淵は深く魚や鼈が集まる。溝は雨が多ければ溢れ、日照りなら涸れる。河海の源は淵が深くて尽きない。鼈は耳がなくても目は覆えず、見ることに精通しているからで、盲人は目がなくても耳は塞げず、聴くことに精通しているからである。濁った水が混々と流れていれば、足を洗えるだろうか。清い水が冷たく流れていれば、冠の紐を洗えるだろうか。絹糸が白絹になれば、冠となることもあり、足袋となることもある。冠となれば頭に戴いて支えられ、足袋となれば足に踏まれる。金の勢いは木に勝つが、一本の刃では一つの林の木を切り尽くせない。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
史記 孝文本紀上曰く、「列侯の高帝に従ひて蜀・漢中に入りし者六十八人皆封を益すこと各々三百戸、故の吏二千石以上の高帝に従ひし潁川の守尊等十人には食邑六百戸、淮陽の守申徒嘉等十人には五百戸、衛尉定等十人には四百戸。淮南王の舅父趙兼を封じて周陽侯と為し、斉王の舅父駟鈞を清郭侯と為す。」と。秋、故の常山の丞相蔡兼を封じて樊侯と為す。人或いは右丞相に説きて曰く、「君本諸呂を誅し、代王を迎ふ、今又其の功を矜り、上賞を受け、尊位に処る、禍且に身に及ばんとす。」と。右丞相勃乃ち病を謝して免じ罷む、左丞相平専ら丞相と為る。二年十月、丞相平卒す、復た絳侯勃を以て丞相と為す。上曰く、「朕聞く古者諸侯国を建つること千余(歳)、各々其の地を守り、時を以て入貢し、民労苦せず、上下驩欣し、遺徳有る靡しと。今列侯多く長安に居り、邑遠く、吏卒の給輸費苦しみ、而して列侯も亦其の民を教馴するに由無し。其れ列侯をして国に之かしめ、吏と為り及び詔して止むる所の者は、太子を遣はせ。」と。十一月晦、日之を食する有り。十二月望、日又食す。上曰く、「朕之を聞く、天蒸民を生じ、之が為に君を置きて以て之を養治せしむ。人主不徳にして、政を布くこと均しからずんば、則ち天之に示すに菑(わざはひ)を以てし、以て治まらざるを誡むと。乃ち十一月晦、日之を食する有り、適(せ)めて天に見はる、菑孰れか焉より大ならん。朕宗廟を保つことを獲、微眇の身を以て兆民君王の上に託す、天下の治乱は、朕一人に在り、唯だ二三の執政は猶ほ吾が股肱のごときなり。朕下は群生を理育する能はず、上は以て三光の明を累す、其の不徳大なり。令至らば、其れ悉く朕の過失、及び知見思の及ばざる所を思ひて、匄(こ)ひて以て朕に告げよ。及び賢良方正にして能く直言極諫する者を挙げて、以て朕の逮ばざるを匡せ。
-
『甲陽軍鑑』品第四十但しさやうの人は我心よきまゝに大略の人をあさくみて自慢の意地ある者なり、とてもの儀に慢気なくして、年增をばうやまい、年おとりを引きたて、同年をばたがひにうちとけ、其中によく近づく人のたらぬ事ある共よく異見を仕り、惣別人も我もよきやうにと存知、少しもへつらふたる儀いでば、心に心を耻る人は何に付けても大きにほめたる事なりといふて、
-
葉隠・聞書第一若き時分、残念記と名づけて、その日その日の誤りを書き付けて見たるに、二十・三十なき日はなし。果てもなく候。今にも一日の事を寝てから案じて見れば、言ひそこなひ、仕そこなひのなき日はなし。さても成らぬものなり。利発任せにする人は、了簡(りょうけん)に及ばざることなり。
-
説苑・君道宋大水す。魯人之を弔いて曰く、「天淫雨を降らし、谿谷満盈し、延いて君の地に及び、以て執政を憂えしむ、臣をして敬んで弔わしむ」と。宋人之に応えて曰く、「寡人不佞にして、斎戒謹まず、邑封修まらず、人を使うこと時ならず、天殃を加え、又君の憂いを遺す、命を拝するの辱を」と。君子之を聞きて曰く、「宋国其れ庶幾からんか」と。問いて曰く、「何の謂いぞや」と。曰く、「昔夏の桀殷の紂は其の過ちを任ぜず、其の亡ぶるや忽焉たり。成湯文武は其の過ちを任ずることを知り、其の興るや勃焉たり。夫れ過ちて之を改むるは、是れ猶お過たざるがごとし。故に曰く其れ庶幾からんかと」と。宋人之を聞き、夙に興き夜に寐ね、早に朝し晏に退き、死を弔い疾を問い、力を宇内に戮す。三年にして、歳豊かに政平らかなり。嚮に宋人をして君子の語を聞かざらしめば、則ち年穀未だ豊かならずして国未だ寧からず。詩に曰く、「時の仔肩を佛け、我に顕徳の行いを示す」と、此を之れ謂うなり。
-
人物志・釋爭若し彼賢にして我が前に処らば、則ち我が徳の未だ至らざるなり。
-
論語・公冶長篇子曰く、已んぬるかな。吾未だ能く其の過を見て、内に自ら訟むる者を見ざるなり。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る