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文子 / 道德

老子曰:執一世之法籍,以非傳代之俗,譬猶膠柱調瑟。聖人者,應時權變,見形施宜,世異則事變,時移則俗易,論世立法,隨時舉事。上古之王,法度不同,非古相返也,時務異也,是故不法其已成之法,而法其所以為法者,與化推移。聖人法之可觀也,其所以作法不可原也,其言可聽也,其所以言不可形也。三皇五帝輕天下,細萬物,齊死生,同變化,抱道推誠,以鏡萬物之情,上與道為友,下與化為人。今欲學其道,不得清明,玄聖守其法籍,行其憲令,必不能以為治矣。

新字:老子曰:執一世之法籍,以非伝代之俗,譬猶膠柱調瑟。聖人者,応時権変,見形施宜,世異則事変,時移則俗易,論世立法,随時舉事。上古之王,法度不同,非古相返也,時務異也,是故不法其已成之法,而法其所以為法者,与化推移。聖人法之可観也,其所以作法不可原也,其言可聴也,其所以言不可形也。三皇五帝軽天下,細万物,斉死生,同変化,抱道推誠,以鏡万物之情,上与道為友,下与化為人。今欲学其道,不得清明,玄聖守其法籍,行其憲令,必不能以為治矣。

書き下し

老子曰く、一世の法籍を執りて、以て代を伝うるの俗を非とするは、譬えば猶お柱に膠して瑟を調うるがごとし。聖人は、時に応じて権変し、形を見て宜しきを施す。世異なれば則ち事変じ、時移れば則ち俗易る。世を論じて法を立て、時に随いて事を挙ぐ。上古の王、法度同じからざるは、古に相返くに非ず、時務異なればなり。是の故に其の已に成れる法に法らずして、其の法を為す所以に法り、化と推移す。聖人の法は観る可きなり、其の法を作る所以は原ぬ可からざるなり。其の言は聴く可きなり、其の言う所以は形す可からざるなり。三皇五帝は天下を軽んじ、万物を細とし、死生を斉しくし、変化を同じくし、道を抱き誠を推して、以て万物の情を鏡にし、上は道と友と為り、下は化と人と為る。今其の道を学ばんと欲して清明を得ず、玄聖の法籍を守り、其の憲令を行わば、必ず以て治を為す能わず。

現代語訳

老子は言った。一つの世の法令書を握って、代々の風俗を非難するのは、琴柱を膠で固めて瑟を調えようとするようなものである。聖人は、時に応じて臨機に変じ、形を見て適切な策を施す。世が変われば事も変わり、時が移れば風俗も改まる。世を論じて法を立て、時に従って事を行う。上古の王たちの法度が同じでないのは、古のやり方に背いたからではなく、時々の務めが違ったからである。だから出来上がった法に倣うのではなく、その法を作った理由に倣い、変化とともに移り行く。聖人の法は見ることができるが、その法を作った理由は推し量りきれない。その言葉は聞くことができるが、その言葉を発した理由は形にできない。三皇五帝は天下を軽んじ、万物を小さく見、生死を等しいとし、変化を同じものとし、道を抱いて誠を尽くし、万物の実情を鏡のように映し、上は道と友となり、下は変化と人となった。いま、その道を学ぼうとして清く明らかな心を得ず、古の賢人の法令書を守り、その命令を行ったなら、必ず治めることはできない。

解説

「膠柱調瑟」の語源となった一段です。琴柱を固めてしまえば音は調えられない。それと同じく、一つの時代の法令集を握って今を裁くのは誤りだと言います。大事なのは「其の已に成れる法に法らずして、其の法を為す所以に法り」。つまり、決まりの文面ではなく、その決まりが作られた理由に学べという提案です。社内規定やマニュアルが現場にそぐわなくなったとき、文面を守らせる前に、何のためのルールだったかを問い直す視点になります。聖人の言葉は聞けても、その言う理由は形にできないという結びは、真似では足りず、自分で道を得る必要があるという含みです。

この章句が説くこと

柱に膠して瑟を調うる世異なれば則ち事変じ其の法を為す所以に法り化と推移す膠柱時変化

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