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文子 / 道德

老子曰:至德之世,賈便其市,農樂其野,大夫安其職,處士脩其道,人民樂其業,是以風雨不毀折,草木不夭無,河出圖,洛出書。及世之衰也,賦斂無度,殺戮無止,刑諫者,殺賢士,是以山崩川涸,蠕動不息,野無百蔬。故世治則愚者不得獨亂,世亂則賢者不能獨治,聖人和愉寧靜,生也,至德道行,命也,故生遭命而後能行,命得時而後能明,必有其世而後有其人。

新字:老子曰:至徳之世,賈便其市,農楽其野,大夫安其職,処士脩其道,人民楽其業,是以風雨不毀折,草木不夭無,河出図,洛出書。及世之衰也,賦斂無度,殺戮無止,刑諫者,殺賢士,是以山崩川涸,蠕動不息,野無百蔬。故世治則愚者不得独乱,世乱則賢者不能独治,聖人和愉寧静,生也,至徳道行,命也,故生遭命而後能行,命得時而後能明,必有其世而後有其人。

書き下し

老子曰く、至徳の世は、賈は其の市を便とし、農は其の野を楽しみ、大夫は其の職に安んじ、処士は其の道を修め、人民は其の業を楽しむ。是を以て風雨毀折せず、草木夭無せず、河は図を出し、洛は書を出す。世の衰うるに及ぶや、賦斂度無く、殺戮止むこと無く、諫むる者を刑し、賢士を殺す。是を以て山崩れ川涸れ、蠕動息まず、野に百蔬無し。故に世治まれば則ち愚者も独り乱す能わず、世乱るれば則ち賢者も独り治む能わず。聖人は和愉寧静なるは、生なり、至徳の道行わるるは、命なり。故に生は命に遭いて後に能く行い、命は時を得て後に能く明らかなり。必ず其の世有りて後に其の人有り。

現代語訳

老子は言った。至徳の世では、商人は市場を使いやすいと思い、農民は野で楽しみ、大夫は職務に安んじ、処士は自分の道を修め、人民は仕事を楽しむ。だから風雨は物を壊さず、草木は若死にせず、黄河は図を出し、洛水は書を出す。世が衰えると、税の取り立てに限りがなく、殺戮が止まず、諫める者を罰し、賢い士を殺す。だから山は崩れ川は涸れ、虫がうごめくのが止まらず、野には野菜も育たない。だから世が治まっていれば愚か者が独りで乱すことはできず、世が乱れていれば賢者が独りで治めることもできない。聖人がやわらぎ楽しみ静かであるのは、生まれつきによるものであり、至徳の道が行われるのは、命運によるものである。だから生まれつきは命運に遭って初めて行われ、命運は時を得て初めて明らかになる。必ずその世があって、その人がいるのである。

解説

よい世と衰えた世を、働く人々の顔つきで対比する段です。至徳の世では「賈は其の市を便とし、農は其の野を楽しみ」、それぞれが自分の場で満足しています。衰えた世では、重税と殺戮に加え「諫むる者を刑し」とあり、諫言を罰することが崩れの入口として挙げられます。結論は、世が治まれば愚者は乱せず、乱れれば賢者も治められない、という環境の力の重さです。「必ず其の世有りて後に其の人有り」。優秀な人材を採るより、その人が働ける場があるかを先に点検せよ、という読みもできます。なお山崩れや河の図書は、当時の徴候の言い方であり、そのまま事実として読む必要はありません。

この章句が説くこと

賈は其の市を便とし諫むる者を刑し世治まれば則ち愚者も独り乱す能わず必ず其の世有りて後に其の人有り至徳環境

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