文子 / 符言
老子曰:聖人同死生,愚人亦同死生,聖人同生死,明於分理,愚人同生死,不知利害之所在。道懸天,物布地,和在人,人主不和即天氣不下,地氣不上,陰陽不調,風雨不時,人民疾飢。
新字:老子曰:聖人同死生,愚人亦同死生,聖人同生死,明於分理,愚人同生死,不知利害之所在。道懸天,物布地,和在人,人主不和即天気不下,地気不上,陰陽不調,風雨不時,人民疾飢。
書き下し
老子曰く、聖人は死生を同じくし、愚人も亦た死生を同じくす。聖人の生死を同じくするは、分理に明らかなればなり。愚人の生死を同じくするは、利害の在る所を知らざればなり。道は天に懸かり、物は地に布き、和は人に在り。人主和せざれば即ち天気下らず、地気上らず、陰陽調わず、風雨時あらず、人民疾み飢う。
現代語訳
老子は言う。聖人は死と生を同じと見なし、愚か者もまた死と生を同じと見なす。聖人が生死を同じと見なすのは、分と理に明らかだからである。愚か者が生死を同じと見なすのは、利害のありかを知らないからである。道は天に懸かり、物は地に布かれ、和は人にある。君主が和しなければ、天の気は降らず、地の気は上らず、陰陽は調わず、風雨は時節に外れ、民は病み飢える。
解説
聖人も愚人も生死を同じと見なす、という意外な書き出しで、分かれ目はその理由にあると述べます。聖人は分と理に明らかだからそう見るのに対し、愚人は利害を知らないからそう見るのです。外から見た態度は似ていても、内実は逆であることを示します。後半は、天には道、地には物、人には和があるとして、君主が和を欠くと天地の秩序まで乱れ、民が苦しむと言います。組織の長の心の状態が、全体に影響するという認識です。見かけが似た行動の背景に何があるかを見抜く目の大切さを、示唆しています。
この章句が説くこと
聖人の生死を同じくするは分理に明らかなればなり愚人の生死を同じくするは和は人に在り分理和
関連する章句
-
『慎思録』巻之四唐の太宗、自ら神采の臣下の畏るる所と為るを知り、常に顔を温めて群臣に接し、人を導きて諫めしめ、且つ諫むる者を賞して以て之を来たす。篤信案ずるに、醍醐帝群臣に対して、常に顔色を和らげて以て之を待ち、事の奏し易からんことを欲す。是れ倭漢同日の談なり。
-
『慎思録』巻之一天地は大寒大暑、大風大雨、迅雷地震、大変の時に方ると雖も、其の太和を失はず。是を以て万物を発育して、生理息まず。人は艱難多事の時、窮困危変の時に方り、横逆払戻の事に遇ふと雖も、従容自得、随処にして之を楽しむの工夫を忘るべからず。中庸の所謂君子は其の位に素して行ひ、入るとして自得せざること無しといふ者なり。苟も此くの如くならざれば、則ち天地の和気と相似ず。
-
『十七条憲法』第一条一に曰わく、和(わ)を以(も)って貴(たっと)しと為(な)し、忤(さから)うこと無きを宗(むね)と為(せ)よ。人は皆(みな)党(たむら)有り、亦(また)達(さと)れる者少なし。是(ここ)を以て、或(あるい)は君父(くんぷ)に順(したが)わず、乍(あるいは)隣里(りんり)に違(たが)う。然(しか)れども、上(かみ)和(やわら)ぎ下(しも)睦(むつ)びて、事(こと)を論(あげつら)うに諧(かな)うときは、則(すなわ)ち事理(じり)自(おのずか)ら通(つう)ず。何事(なにごと)か成らざらん。
-
『呻吟語』内篇・倫理・惟だ和のみ妙と為し、深と為し、速と為し、難と為す人子の和氣・愉色・婉容、發し得て深き時、養ひ得て定まる時、父母の冷面寒鐵、雷霆震怒に任せて、只だ是れ這の一腔の溫意、一面の春風なれば、則ち自ら回らざるの天無く、自ら屢〻變ずるの天無し。讒譖何に由りてか入らん、嫌隙何に由りてか作らん。其の次は敬慎に如くは莫し。夔夔齋栗は、敬慎の至りなり、故に瞽瞍も亦た允に若へり。溫和は人に示すに愛す可きを以てし、父母の惡怒を消融す。敬慎は人に示すに矜れむ可きを以てし、父母の悲憐を激發す。所謂誠意を積みて以て之を感動する者は、和を養ひ敬を致すの謂ひなり。蓋し親を格すの功は、惟だ和のみ妙と為し、深と為し、速と為し、難と為す。至性純孝の者に非ざれば能はず。敬慎は猶ほ勉強す可きのみ。而今の人子は涼薄の色、惰慢の身、驕蹇の性を以てし、父母の怒りを犯すに及びて、既に挽回するを肯んぜず、又倨傲にして以て之を甚だしくす。此れ其の人は孝弟の外に在り、故に論ずるに足らず。即ち平日溫愉の子有るも、父母の悅ばざるに當たりて亦た慍見し、或いは疑ひを生じて怒りを遷す者、或いは意に遷怒無くして嫌を避けざる者、或いは善く嫌を避けずして愈〻避けて愈〻嫌を冒す者あり。隙を積みて釁を成し、遂に不祥を致す。豈に父母の慈ならざらんや。此れ孤臣孽子の法戒、志を堅くし仁に熟するの妙道なり。
-
言志四録・南洲手抄三軍和せずば、以て戦を言ひ難し。百官和せずば、以て治を言ひ難し。書に云ふ、寅を同じうし恭を協せ和衷せよやと。唯だ一の和字、治乱を一串す。
-
『慎思録』巻之一心を平らかにし気を和らぐるは、是れ身を養ひ徳を養ふの工夫なり。気を養ひて暴ふこと無きの工夫は、温恭和順、従容として迫らず、声色を動かさざるに在り。気を養ふこと此くの如くなれば、以て其の楽しみを失はざるべし。温恭の二字、経伝多く之を言ふ。是れ善を為すの初めなり。苟も是くの如くならざれば、則ち善を為すこと能はず。人に接するの道、当に是くの如くなるべし。
人生の答えは、ぜんぶ古典に書いてあった。
古典の入門書『人生の教科書』(PDF)と、師導の全機能1か月がセットで700円。二十四の悩みに、論語・老子・孫子から徒然草・五輪書までが答えます。
本の中身を見る