文子 / 精誠
老子曰:子之死父,臣之死君,非出以求名也,恩心藏於中而不違其難也。君子之憯怛非正為也,自中出者也,亦察其所行,聖人不慚於影,君子慎其獨也,舍近期遠,塞矣。故聖人在上則民樂其治,在下則民慕其意,志不忘乎欲利人。
新字:老子曰:子之死父,臣之死君,非出以求名也,恩心蔵於中而不違其難也。君子之憯怛非正為也,自中出者也,亦察其所行,聖人不慚於影,君子慎其独也,舎近期遠,塞矣。故聖人在上則民楽其治,在下則民慕其意,志不忘乎欲利人。
書き下し
老子曰く、子の父に死し、臣の君に死するは、出でて以て名を求むるに非ず。恩心中に蔵して其の難に違わざるなり。君子の憯怛は正に為すに非ず、中より出ずる者なり。亦た其の行う所を察す。聖人は影に慚じず、君子は其の独りを慎む。近きを舎てて遠きを期すれば、塞がる。故に聖人上に在れば則ち民其の治を楽しみ、下に在れば則ち民其の意を慕う。志は人を利せんと欲するを忘れず。
現代語訳
老子は言った。子が父のために死に、臣が君のために死ぬのは、外に出て名を求めるためではない。恩を思う心が内に蔵されていて、その難から逃れないのである。君子の痛み悲しみは、わざと行うものではなく、内から出てくるものである。またその行うところをよく察する。聖人は影に恥じず、君子はひとりのときを慎む。身近なものを捨てて遠くを期待すれば、道は塞がる。だから聖人が上にいれば民はその治を楽しみ、下にいれば民はその志を慕う。その志は、人を利することを忘れない。
解説
名のためではなく、恩の心が内にあるから行動する、という動機の話です。「君子の憯怛は正に為すに非ず、中より出ずる者なり」。思いやりや責任感は、演出で作るものでなく内側から出るものだ、という指摘でしょう。「聖人は影に慚じず、君子は其の独りを慎む」は、誰も見ていない場面でも行いを変えない、という慎独の教えです。評価されるから動く人は、見られない場面で崩れます。「近きを舎てて遠きを期す」は、足元の身近な人を大切にせずに、遠い成果ばかり狙う人の道は塞がる、というわけです。
この章句が説くこと
君子の憯怛は正に為すに非ず聖人は影に慚じず君子は其の独りを慎む慎独動機誠
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