武訓 / 下・第28段
良將の兵を用ひて戰ふには、士卒のこゝろを同じくし、力を一にして、一同に進み、一同に退かしむ。勇者も一人すゝまず、一同に、下知にしたがひて進ましむ。怯き者も獨退かしめず。退くべき時に、下知にしたがひて、一同に退かしむ。一人ぬけがけし、さきがけすれば、陣法みだれて、軍の勢わかれ、よわくなる。吳子が、ぬけがけして首を取りたる勇士を切りたるも、此の意なり。
新字:良将の兵を用ひて戦ふには、士卒のこゝろを同じくし、力を一にして、一同に進み、一同に退かしむ。勇者も一人すゝまず、一同に、下知にしたがひて進ましむ。怯き者も独退かしめず。退くべき時に、下知にしたがひて、一同に退かしむ。一人ぬけがけし、さきがけすれば、陣法みだれて、軍の勢わかれ、よわくなる。呉子が、ぬけがけして首を取りたる勇士を切りたるも、此の意なり。
書き下し
良將の兵を用ひて戰ふには、士卒のこゝろを同じくし、力を一にして、一同に進み、一同に退かしむ。勇者も一人すゝまず、一同に、下知にしたがひて進ましむ。怯き者も獨退かしめず。退くべき時に、下知にしたがひて、一同に退かしむ。一人ぬけがけし、さきがけすれば、陣法みだれて、軍の勢わかれ、よわくなる。吳子が、ぬけがけして首を取りたる勇士を切りたるも、此の意なり。
現代語訳
良将が兵を用いて戦うには、士卒の心を同じくし、力を一つにして、一同に進み、一同に退かせる。勇者でも一人だけ進ませず、一同、命令に従って進ませる。臆病な者も一人だけ退かせず、退くべきときに命令に従って、一同に退かせる。一人が抜け駆けや先駆けをすれば、陣法が乱れ、軍の勢いが分かれて弱くなる。呉子が、抜け駆けして首を取った勇士を斬ったのも、この意である。
解説
この章句が説くこと
関連する章句
-
『文武訓』武訓下一古人の出陣は、喪の礼を以て是を行ふ。軍の命下る日は、士皆泣きて涙を流す。父母兄弟にわかれん事をかなしめばなり。戦をなすこと必死の道なれば、かくのごとくすること、むべならずや。一良将の兵を用ひて戦ふには、士卒のこころを同じくし力を一にして、一同に進み一同に退かしむ。勇者も一人すすまず、一同に下知にしたがひて進ましむ。怯き者も独退かしめず。退くべき時は、下知にしたがひて一同に退かしむ。一人ぬけがけしさきがけすれば、陣法みだれて、軍の勢わかれ弱くなる。呉子が、ぬけがけして首を取りたる勇士を切りたるも、此意なり。
-
『武訓』下・第30段敵陣にむかつては、進むべくして進み、退くべくして退く、是、和語に、かゝるも引くもをりによるといふがごとし。戰の道、進退によき節あり。勇者は、進むべからずして進み、退くべくして退かず。是、軍法の禁ずる所なり。大過とす。進むべくして進まず、退くべからずして退くは、是、怯者のしわざなり。不及とす。これ亦軍法の禁ずる所なり。進むべからずして進み、退くべくして退かず。進むべくして進まず、退くべからずして退く。此四のものは、勇怯同じからざれども、ともに軍法に害あり。軍法にしたがひては、勇者もひとり進まず。怯者もひとり退かず。皆、力を一にするは、良將の兵なり。
-
『武訓』上・第28段いにしへの良將は、只、勇猛計略のみすぐれたるにあらず。文武兼用ひ、寬猛相用ひ、仁愛ありて小過をゆるし、舊惡をわすれ、諫をよく聽き用ひて、おのれにほこらず、財をしまずして功を賞す。故に、士卒和同して、よく其の功をなせり。
-
『武訓』上・第12段金鼓とは、かね大鼓なり。是、陣にのぞんで、士卒の耳を一にする器なり。旋旗は、はたのぼりなり。士卒の目を一にするためなり。軍にのぞむには、進むも退くも度ありて、一樣なるべし。勇者も獨進まず、怯者も獨退かず、三軍力を同じくすれば、其の勢力つよくして、敵にかちやすし。
-
『文武訓』武訓下一将たる人、号令明かにしてあやまらず、賞罰信ありてちがはず、士卒と苦楽を同じくし、われひとり楽まず、寒暑をも士卒と同じくし、士卒をいたはりてくるしめず。かくの如くすれば、士卒上におもひ附きて、死力をつくす。
-
『武訓』下・第19段將たる人、號令明らかにしてあやまらず、賞罰信ありてちがはず、士卒と苦樂を同じくし、われひとり樂しまず、寒暑をも士卒と同じくし、士卒をいたはりてくるしめず。かくの如くすれば、士卒上におもひつきて、死力をつくす。
人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見る