文武訓 / 武訓下
一古人の出陣は、喪の禮を以て是を行ふ。軍の命下る日は、士皆泣きて涙を流す。父母兄弟にわかれん事をかなしめばなり。戰をなすこと必死の道なれば、かくのごとくすること、むべならずや。一良將の兵を用ひて戰ふには、士卒のこゝろを同じくし力を一にして、一同に進み一同に退かしむ。勇者も一人すゝまず、一同に下知にしたがひて進ましむ。怯き者も獨退かしめず。退くべき時は、下知にしたがひて一同に退かしむ。一人ぬけがけしさきがけすれば、陣法みだれて、軍の勢わかれ弱くなる。吳子が、ぬけがけして首を取りたる勇士を切りたるも、此意なり。
新字:一古人の出陣は、喪の礼を以て是を行ふ。軍の命下る日は、士皆泣きて涙を流す。父母兄弟にわかれん事をかなしめばなり。戦をなすこと必死の道なれば、かくのごとくすること、むべならずや。一良将の兵を用ひて戦ふには、士卒のこゝろを同じくし力を一にして、一同に進み一同に退かしむ。勇者も一人すゝまず、一同に下知にしたがひて進ましむ。怯き者も独退かしめず。退くべき時は、下知にしたがひて一同に退かしむ。一人ぬけがけしさきがけすれば、陣法みだれて、軍の勢わかれ弱くなる。呉子が、ぬけがけして首を取りたる勇士を切りたるも、此意なり。
書き下し
一古人の出陣は、喪の礼を以て是を行ふ。軍の命下る日は、士皆泣きて涙を流す。父母兄弟にわかれん事をかなしめばなり。戦をなすこと必死の道なれば、かくのごとくすること、むべならずや。一良将の兵を用ひて戦ふには、士卒のこころを同じくし力を一にして、一同に進み一同に退かしむ。勇者も一人すすまず、一同に下知にしたがひて進ましむ。怯き者も独退かしめず。退くべき時は、下知にしたがひて一同に退かしむ。一人ぬけがけしさきがけすれば、陣法みだれて、軍の勢わかれ弱くなる。呉子が、ぬけがけして首を取りたる勇士を切りたるも、此意なり。
現代語訳
昔の人の出陣は、喪の礼をもって行いました。軍の命令が下る日は、武士は皆泣いて涙を流しました。父母兄弟と別れることを悲しんだからです。戦をするのは必死の道なので、このようにするのももっともではないでしょうか。良将が兵を用いて戦うには、兵士の心を同じくし、力を一つにして、一同に進み一同に退かせます。勇者も一人だけ進ませず、一同に命令に従って進ませます。臆病な者も一人だけ退かせません。退くべき時は、命令に従って一同に退かせます。一人が抜け駆けや先駆けをすれば、陣法が乱れて、軍の勢いが分かれて弱くなります。呉子が、抜け駆けして首を取った勇士を斬ったのも、この意味です。
解説
この章句が説くこと
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