武訓 / 上・第12段
金鼓とは、かね大鼓なり。是、陣にのぞんで、士卒の耳を一にする器なり。旋旗は、はたのぼりなり。士卒の目を一にするためなり。軍にのぞむには、進むも退くも度ありて、一樣なるべし。勇者も獨進まず、怯者も獨退かず、三軍力を同じくすれば、其の勢力つよくして、敵にかちやすし。
新字:金鼓とは、かね大鼓なり。是、陣にのぞんで、士卒の耳を一にする器なり。旋旗は、はたのぼりなり。士卒の目を一にするためなり。軍にのぞむには、進むも退くも度ありて、一様なるべし。勇者も独進まず、怯者も独退かず、三軍力を同じくすれば、其の勢力つよくして、敵にかちやすし。
書き下し
金鼓とは、かね大鼓なり。是、陣にのぞんで、士卒の耳を一にする器なり。旋旗は、はたのぼりなり。士卒の目を一にするためなり。軍にのぞむには、進むも退くも度ありて、一樣なるべし。勇者も獨進まず、怯者も獨退かず、三軍力を同じくすれば、其の勢力つよくして、敵にかちやすし。
現代語訳
金鼓とは、鐘と太鼓のことです。これは陣に臨んで、士卒の耳を一つにする道具です。旋旗は、旗と幟のことで、士卒の目を一つにするためのものです。軍に臨むには、進むのも退くのも度合いがあって、そろっているべきです。勇者も独り進まず、怯者も独り退かず、三軍が力を同じくすれば、その勢いは強くて、敵に勝ちやすいのです。
解説
鐘と太鼓は耳を、旗と幟は目を、それぞれ一つにするための道具だと説明されます。進退をそろえることが、勇者も怯者も同じ動きにそろえ、集団として力を発揮させる条件になるという話です。個々の勇ましさより、全体の足並みが勝ちを生むという見方といえます。いまの組織でも、メンバーの優秀さより、目標と合図が共有されているかどうかが成果を左右します。目で見て分かる指標や、耳で聞いて分かる合図を、チームの中でどう整えるかが課題になります。独断で突き進む人も、一人だけ引く人も出さない仕組みづくりが、管理職の役目です。
この章句が説くこと
足並み目標の共有合図三軍チーム武訓
関連する章句
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『文武訓』武訓上一金鼓とはかね太鼓なり。是陣にのぞんで士卒の耳を一にする器なり。旌旗ははたのぼりなり。士卒の目を一にするためなり。軍にのぞむには、進むも退くも度ありて一様なるべし。勇者も独進まず、怯者も独退かず、三軍力を同じくすれば、其勢力つよくして、敵に勝ちやすし。
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孫子・軍争篇軍政に曰く、言うも相聞こえず、故に金鼓を為る。視るも相見えず、故に旌旗を為る、と。夫れ金鼓旌旗は、民の耳目を一にする所以なり。民既に専一なれば、則ち勇者も独り進むを得ず、怯者も独り退くを得ず。此れ衆を用うるの法なり。
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『武訓』下・第28段良將の兵を用ひて戰ふには、士卒のこゝろを同じくし、力を一にして、一同に進み、一同に退かしむ。勇者も一人すゝまず、一同に、下知にしたがひて進ましむ。怯き者も獨退かしめず。退くべき時に、下知にしたがひて、一同に退かしむ。一人ぬけがけし、さきがけすれば、陣法みだれて、軍の勢わかれ、よわくなる。吳子が、ぬけがけして首を取りたる勇士を切りたるも、此の意なり。
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『長短経』教戦故に曰く、衆を治むること寡を治むるが如きは、分数是れなり〔部曲を分と為し、什五を数と為す〕。衆を闘わすこと少なきを闘わすが如きは、形名是れなり〔旌旗を形と曰い、金鼓を名と曰う〕。言相聞こえず、故に鼓鐸を為る。視相見えず、故に旌旗を為る。夫れ金鼓旌旗は、人の耳目を一にする所以なり〔夜戦には火鼓多く、昼戦には旌旗多し。人の耳目を変ずる所以なり〕。是に知る、鼓鞞金鐸は、耳を威す所以なり。旌旗麾章は、目を威す所以なり。禁令刑罰は、心を威す所以なり。耳は声に威さるれば、清ならざるべからず。目は色に威さるれば、明ならざるべからず。心は罰に威さるれば、厳ならざるべからず。三者立たざれば、勝つと雖も必ず敗る。故に曰く「将の麾く所、従いて移らざる莫く、将の指す所、前みて死せざる莫し」と。紛紛紜紜として、闘い乱るるも乱すべからず。混混沌沌として、形円くして敗るべからず。此れ衆を用うるの法なり。
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呉子・論将篇呉子曰く、夫れ鼙鼓金鐸は、耳を威す所以なり。旌旗麾幟は、目を威す所以なり。禁令刑罰は、心を威す所以なり。耳は声に威さる、清からざるべからず。目は色に威さる、明らかならざるべからず。心は刑に威さる、厳ならざるべからず。三つの者立たざれば、其の国有りと雖も、必ず敵に敗る。故に曰く、将の麾く所、従い移らざるは莫く、将の指す所、前んで死せざるは莫し、と。
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尉繚子・勒卒令金・鼓・鈴・旗、四者各法有り。之を鼓すれば則ち進み、鼓を重ぬれば則ち撃つ。之を金すれば則ち止まり、金を重ぬれば則ち退く。鈴は、令を伝ふるなり。旗は、之を左に麾けば則ち左し、之を右に麾けば則ち右す、奇兵は則ち是に反す。一鼓一撃して左し、一鼓一撃して右す。一歩に一鼓するは、歩鼓なり。十歩に一鼓するは、趨鼓なり。音絶えざるは、騖鼓なり。商は、将の鼓なり。角は、帥の鼓なり。小鼓は、伯の鼓なり。三鼓同じければ、則ち将・帥・伯其の心一なり。奇兵は則ち是に反す。鼓の次を失ふ者は誅有り、諠譁する者は誅有り、金・鼓・鈴・旗を聴かずして動く者は誅有り。百人にして戦を教へ、教成れば、之を千人に合す。千人教成れば、之を万人に合す。万人教成れば、之を三軍に会す。三軍の衆、分有り合有り、大戦の法を為す。教成れば、之を試みるに閲を以てす。方も亦勝ち、円も亦勝ち、錯斜も亦勝ち、険に臨むも亦勝つ。敵山に在れば、縁りて之に従ふ。敵淵に在れば、没して之に従ふ。敵を求むること亡子を求むるが如く、之に従ひて疑ふこと無し、故に能く敵を敗りて其の命を制す。
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