長短経 / 教戦
故曰、治衆如治寡、分數是也〔部曲為分、什五為數。、〕鬬衆如鬬少、形名是也〔旌旗曰形、金鼓曰名。〕言不相聞、故為鼓鐸、視不相見、故為旌旗。夫金鼔旌旗、所以一人耳目也。〔夜戰多火鼓、畫戰多旌旗。所以變人耳目。〕是知鼓鞞金鐸、所以威耳、旌旗麾章、所以威目、禁令刑罰、所以威心。耳威于聲、不可不清、目威于色、不可不明、心威于罰、不可不嚴。三者不立、雖勝必敗。故曰、“將之所麾、莫不從移、將之所指、莫不前死。”紛紛紜紜、聞亂而不可亂、混混沌沌、形圓而不可敗、此用衆之法也。
新字:故曰、治衆如治寡、分数是也〔部曲為分、什五為数。、〕闘衆如闘少、形名是也〔旌旗曰形、金鼓曰名。〕言不相聞、故為鼓鐸、視不相見、故為旌旗。夫金鼓旌旗、所以一人耳目也。〔夜戦多火鼓、画戦多旌旗。所以変人耳目。〕是知鼓鞞金鐸、所以威耳、旌旗麾章、所以威目、禁令刑罰、所以威心。耳威于声、不可不清、目威于色、不可不明、心威于罰、不可不厳。三者不立、雖勝必敗。故曰、“将之所麾、莫不従移、将之所指、莫不前死。”紛紛紜紜、聞乱而不可乱、混混沌沌、形円而不可敗、此用衆之法也。
書き下し
故に曰く、衆を治むること寡を治むるが如きは、分数是れなり〔部曲を分と為し、什五を数と為す〕。衆を闘わすこと少なきを闘わすが如きは、形名是れなり〔旌旗を形と曰い、金鼓を名と曰う〕。言相聞こえず、故に鼓鐸を為る。視相見えず、故に旌旗を為る。夫れ金鼓旌旗は、人の耳目を一にする所以なり〔夜戦には火鼓多く、昼戦には旌旗多し。人の耳目を変ずる所以なり〕。是に知る、鼓鞞金鐸は、耳を威す所以なり。旌旗麾章は、目を威す所以なり。禁令刑罰は、心を威す所以なり。耳は声に威さるれば、清ならざるべからず。目は色に威さるれば、明ならざるべからず。心は罰に威さるれば、厳ならざるべからず。三者立たざれば、勝つと雖も必ず敗る。故に曰く「将の麾く所、従いて移らざる莫く、将の指す所、前みて死せざる莫し」と。紛紛紜紜として、闘い乱るるも乱すべからず。混混沌沌として、形円くして敗るべからず。此れ衆を用うるの法なり。
現代語訳
だから、大勢を治めるのを少人数を治めるように行えるのは、分と数、つまり組織の区分によるのであり〔部隊の区分を分、十人や五人の組を数という〕、大勢を戦わせるのを少人数を戦わせるように行えるのは、形と名、つまり合図によるのである〔旗を形、鉦や太鼓を名という〕。言葉が互いに聞こえないから太鼓や鐸を作り、目で互いに見えないから旗を作る。鉦・太鼓・旗は、人々の耳目を一つにするためのものである〔夜の戦いでは火と太鼓を多くし、昼の戦いでは旗を多くする。人々の耳目の向きを変えるためである〕。だから、太鼓や鐸は耳を引き締め、旗や標識は目を引き締め、禁令や刑罰は心を引き締めるものだとわかる。耳は音で引き締めるので、音は澄んでいなければならない。目は色で引き締めるので、色ははっきりしていなければならない。心は罰で引き締めるので、罰は厳正でなければならない。この三つが立たなければ、勝っても必ず敗れる。だから「将軍が指図すれば皆そちらへ動き、将軍が指させば皆進んで死ぬ」と言う。入り乱れて戦っていても乱れず、混沌として形が丸くなっていても敗れない。これが大勢を用いる法である。
解説

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関連する章句
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呉子・論将篇呉子曰く、夫れ鼙鼓金鐸は、耳を威す所以なり。旌旗麾幟は、目を威す所以なり。禁令刑罰は、心を威す所以なり。耳は声に威さる、清からざるべからず。目は色に威さる、明らかならざるべからず。心は刑に威さる、厳ならざるべからず。三つの者立たざれば、其の国有りと雖も、必ず敵に敗る。故に曰く、将の麾く所、従い移らざるは莫く、将の指す所、前んで死せざるは莫し、と。
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孫子・軍争篇軍政に曰く、言うも相聞こえず、故に金鼓を為る。視るも相見えず、故に旌旗を為る、と。夫れ金鼓旌旗は、民の耳目を一にする所以なり。民既に専一なれば、則ち勇者も独り進むを得ず、怯者も独り退くを得ず。此れ衆を用うるの法なり。
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『文武訓』武訓上一金鼓とはかね太鼓なり。是陣にのぞんで士卒の耳を一にする器なり。旌旗ははたのぼりなり。士卒の目を一にするためなり。軍にのぞむには、進むも退くも度ありて一様なるべし。勇者も独進まず、怯者も独退かず、三軍力を同じくすれば、其勢力つよくして、敵に勝ちやすし。
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尉繚子・勒卒令金・鼓・鈴・旗、四者各法有り。之を鼓すれば則ち進み、鼓を重ぬれば則ち撃つ。之を金すれば則ち止まり、金を重ぬれば則ち退く。鈴は、令を伝ふるなり。旗は、之を左に麾けば則ち左し、之を右に麾けば則ち右す、奇兵は則ち是に反す。一鼓一撃して左し、一鼓一撃して右す。一歩に一鼓するは、歩鼓なり。十歩に一鼓するは、趨鼓なり。音絶えざるは、騖鼓なり。商は、将の鼓なり。角は、帥の鼓なり。小鼓は、伯の鼓なり。三鼓同じければ、則ち将・帥・伯其の心一なり。奇兵は則ち是に反す。鼓の次を失ふ者は誅有り、諠譁する者は誅有り、金・鼓・鈴・旗を聴かずして動く者は誅有り。百人にして戦を教へ、教成れば、之を千人に合す。千人教成れば、之を万人に合す。万人教成れば、之を三軍に会す。三軍の衆、分有り合有り、大戦の法を為す。教成れば、之を試みるに閲を以てす。方も亦勝ち、円も亦勝ち、錯斜も亦勝ち、険に臨むも亦勝つ。敵山に在れば、縁りて之に従ふ。敵淵に在れば、没して之に従ふ。敵を求むること亡子を求むるが如く、之に従ひて疑ふこと無し、故に能く敵を敗りて其の命を制す。
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『長短経』教戦〔夫れ五陣の法は、鼓旗を主と為す。一鼓して青旗を挙ぐれば、則ち曲陣と為す。二鼓して赤旗を挙ぐれば、則ち鋭陣と為す。三鼓して黄旗を挙ぐれば、則ち員陣と為す。四鼓して白旗を挙ぐれば、則ち方陣と為す。五鼓して黒旗を挙ぐれば、則ち直陣と為す。曲陣は木なり。鋭陣は火なり。員陣は土なり。方陣は金なり。直陣は水なり。此の五行の陣は、展転して相生じ、以て勝負を為す。凡そ五陣を結ぶの法は、五五相保つ。五人を一長と為し、五長を一師と為し、五師を一帥と為し、五帥を一校と為し、五校を一火と為し、五火を一橦と為し、五橦を一軍と為せば、則ち事備わる。夫れ兵の便は、務めて節度を知る。短き者は旌旗を持ち、勇なる者は金鼓を持ち、弱き者は糧牧に給し、智なる者は謀主と為る。郷里相比し、五五相保つ。一鼓して正立し、二鼓して起ちて食い、三鼓して厳辦し、四鼓して行に就く。間聞して令を聴き、然る後に旗を挙げて兵を出だし、幡の至る所に随うなり。〕
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孫子・勢篇孫子曰く、凡そ衆を治むること寡を治むるが如くなるは、分数是なり。衆を闘わしむること寡を闘わしむるが如くなるは、形名是なり。三軍の衆、必ず敵を受けて敗るる無からしむべき者は、奇正是なり。兵の加うる所、碫を以て卵に投ずるが如き者は、虚実是なり。