武訓 / 上・第10段
將をえらぶには、智を先とし、勇を後とす。智なければ、勇ありても、謀なく思案なくして、兵の道にくらし。勇あるをたのんで、過多し。かくのごとくなる將は、やぶれやすし。良將にあらず。良將は、智ふかく、又、勇もありて、敵をはかり、身方をかへりみ、事にのぞんでおそれ、謀を好んで事をなす。故に、敗れがたし。
新字:将をえらぶには、智を先とし、勇を後とす。智なければ、勇ありても、謀なく思案なくして、兵の道にくらし。勇あるをたのんで、過多し。かくのごとくなる将は、やぶれやすし。良将にあらず。良将は、智ふかく、又、勇もありて、敵をはかり、身方をかへりみ、事にのぞんでおそれ、謀を好んで事をなす。故に、敗れがたし。
書き下し
將をえらぶには、智を先とし、勇を後とす。智なければ、勇ありても、謀なく思案なくして、兵の道にくらし。勇あるをたのんで、過多し。かくのごとくなる將は、やぶれやすし。良將にあらず。良將は、智ふかく、又、勇もありて、敵をはかり、身方をかへりみ、事にのぞんでおそれ、謀を好んで事をなす。故に、敗れがたし。
現代語訳
将を選ぶには、智を先とし、勇を後とします。智がなければ、勇があっても、謀もなく思案もなく、兵の道にくらいからです。勇のあることを頼みにして、過ちが多くなります。このような将は破れやすく、良将ではありません。良将は、智が深く、また勇もあって、敵を推し量り、味方をかえりみ、事に臨んで恐れ、謀を好んで事をなします。ですから敗れにくいのです。
解説
将を選ぶ基準は、勇より智が先だと明言する短い段です。勇に頼る将は謀も思案もなく、過ちが多いとされます。良将の姿として「事に臨んで恐れ」とあるのが印象的で、恐れを持つことが弱さではなく、慎重さの源として位置づけられています。敵を推し量り、味方をかえりみるという二方向の目配りも、勝ちにくさではなく敗れにくさを生む要素です。管理職を選ぶ際も、押しの強さより、状況を読み、周囲を見る力を先に見るべきだというのが現代への橋渡しになります。慎重さを臆病と取り違えない点も重要です。
この章句が説くこと
将の選び方智勇慎重良将武訓
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