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武家小学 / 飲食と色欲の節

一飲食と男女の欲は。天下の人何れも好み欲る所也。然共飲食は身躰を養ひ禮節を行んが爲也。色欲は子孫を嗣て血脉を全して先祖の祭をなさしめ。又情欲を止て邪淫なからしむる爲也。皆自然の節あり。愼て程よくすべし。凡士は農工商の三民の長にて。三民へ敎を施し。三民を治る役故。家業彌重して。職に任ずる處又甚重し。故に殊更愼ずんば有べからず。一飲食は分量を過し飽まで食ば。食滯て病を生ず。飲酒も節を過れば禮を失ひ爭を起べし。然らざれば睡眠を生じ。或は立居もおもく萬事怠生ずべし。怠多時は家業も忽に成て職る所の事も凝滯て其蔽大なるべし。

新字:一飲食と男女の欲は。天下の人何れも好み欲る所也。然共飲食は身体を養ひ礼節を行んが為也。色欲は子孫を嗣て血脉を全して先祖の祭をなさしめ。又情欲を止て邪淫なからしむる為也。皆自然の節あり。慎て程よくすべし。凡士は農工商の三民の長にて。三民へ教を施し。三民を治る役故。家業弥重して。職に任ずる処又甚重し。故に殊更慎ずんば有べからず。一飲食は分量を過し飽まで食ば。食滞て病を生ず。飲酒も節を過れば礼を失ひ争を起べし。然らざれば睡眠を生じ。或は立居もおもく万事怠生ずべし。怠多時は家業も忽に成て職る所の事も凝滞て其蔽大なるべし。

書き下し

一飲食と男女の欲は。天下の人何れも好み欲る所也。然共飲食は身躰を養ひ禮節を行んが爲也。色欲は子孫を嗣て血脉を全して先祖の祭をなさしめ。又情欲を止て邪淫なからしむる爲也。皆自然の節あり。愼て程よくすべし。凡士は農工商の三民の長にて。三民へ敎を施し。三民を治る役故。家業彌重して。職に任ずる處又甚重し。故に殊更愼ずんば有べからず。一飲食は分量を過し飽まで食ば。食滯て病を生ず。飲酒も節を過れば禮を失ひ爭を起べし。然らざれば睡眠を生じ。或は立居もおもく萬事怠生ずべし。怠多時は家業も忽に成て職る所の事も凝滯て其蔽大なるべし。

現代語訳

飲食と男女の欲は、天下の人が誰も好み欲しがるものです。しかし飲食は身体を養い、礼節を行うためのものです。色欲は子孫を継いで血脈を全うし、先祖の祭りをさせるため、また情欲を止めて邪淫をなくすためのものです。いずれも自然の節度があります。慎んでほどよくしなさい。そもそも武士は農工商の三民の長であり、三民に教えを施し、三民を治める役ですから、家業はいよいよ重く、職に任ずる所もまた甚だ重いのです。ですから、とりわけ慎まなければなりません。一、飲食は分量を過ぎて飽きるまで食べれば、食べ物が滞って病を生じます。飲酒も節度を過ぎれば礼を失い、争いを起こします。そうでなければ眠気を生じ、あるいは立ち居も重くなって、万事に怠りが生じるでしょう。怠りが多ければ家業もおろそかになって、司る事も滞り、その害は大きいでしょう。

解説

飲食は身体を養い礼節を行うため、色欲は子孫を継ぎ祭りを絶やさず邪淫を防ぐためのもので、いずれにも自然の節度があるとします。武士は農工商の長として教え治める重い役目を担うので、特に慎むべきだと言います。飲食を過ぎれば病や争い、眠気、怠りを生み、職務の滞りという大きな害に至ると述べます。現代の管理職にとっても、飲酒や会食、生活習慣の乱れは、判断力や職場の信頼を損なう原因です。重責を担う者ほど自己管理を徹底することで、組織全体への悪影響を防げます。

この章句が説くこと

飲食節度色欲三民の長自己管理飲酒

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