武家小学 / 家での座臥と備え
一家に住時は。前章のどく(夙起夜寐に出たり)座する時は威儀を正し用具を佩て。常ゝ不意の變有節の心得を忘るべからず。臥時は戸せずとて。武備を忘て由斷して臥時は寐入て死人に似たるを言なり。是愼なく怠の顯るゝ所なり。士は目さとき樣に心懸べし。傍に利器を離さず。利器とは太刀脇差或は手鎗半弓の類を側に置て。不意の變に應ずることゝすべし。尤夜の戒を嚴くすべし(夜の戒の事前章に出たり)皆人より先立其勞を爲べし。人より先に休まんと欲るは士の法にあらず。殊更君に仕て勞する事有時は。人に先立。偖休む時は人に後て休むべし。
新字:一家に住時は。前章のどく(夙起夜寐に出たり)座する時は威儀を正し用具を佩て。常ゝ不意の変有節の心得を忘るべからず。臥時は戸せずとて。武備を忘て由断して臥時は寐入て死人に似たるを言なり。是慎なく怠の顕るゝ所なり。士は目さとき様に心懸べし。傍に利器を離さず。利器とは太刀脇差或は手鎗半弓の類を側に置て。不意の変に応ずることゝすべし。尤夜の戒を厳くすべし(夜の戒の事前章に出たり)皆人より先立其労を為べし。人より先に休まんと欲るは士の法にあらず。殊更君に仕て労する事有時は。人に先立。偖休む時は人に後て休むべし。
書き下し
一家に住時は。前章のどく(夙起夜寐に出たり)座する時は威儀を正し用具を佩て。常ゝ不意の變有節の心得を忘るべからず。臥時は戸せずとて。武備を忘て由斷して臥時は寐入て死人に似たるを言なり。是愼なく怠の顯るゝ所なり。士は目さとき樣に心懸べし。傍に利器を離さず。利器とは太刀脇差或は手鎗半弓の類を側に置て。不意の變に應ずることゝすべし。尤夜の戒を嚴くすべし(夜の戒の事前章に出たり)皆人より先立其勞を爲べし。人より先に休まんと欲るは士の法にあらず。殊更君に仕て勞する事有時は。人に先立。偖休む時は人に後て休むべし。
現代語訳
家に住む時は、前の章のとおり(夙起夜寐の章に出ています)、座る時は威儀を正し、道具を腰に差して、常に思いがけない変事の折の心得を忘れてはなりません。「寝る時は戸締まりをしない」というのは、武備を忘れて油断して寝る時、眠り込んで死人に似ていることを言うのです。これは慎みがなく怠りの現れる所です。武士は目ざとく眠るよう心がけなさい。傍らに利器を離さないようにします。利器とは太刀、脇差、あるいは手槍、半弓の類で、これらを側に置いて、思いがけない変事に応じられるようにしなさい。もっとも、夜の戒めを厳しくしなさい(夜の戒めの事は前の章に出ています)。みな人より先にその労をしなさい。人より先に休もうとするのは、武士の法ではありません。ことに主君に仕えて苦労のある時は、人に先立って働き、さて休む時は人に後れて休みなさい。
解説
この章句が説くこと
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