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武家小学 / 径によらず

一道を行時は徑によらずといへり。徑は往還にはあらで近路也。是速ならんとを欲て私する所也。動時は必正を以てすべし。又徑は人常に往還する處の正路にあ□□わき路なり。是を行時は【怪/惟】獸盜賊の恐れあり。こゝを以て身を愼む者は徑に由ず。是君子は危によらざるの義なり。故に周禮に野の橫行徑踰を禁ずといふを以て知るべし。禮記に壹足を擧て敢て父母を忘れず。是故に道にして徑せず舟にして游せず。敢て先父母の遺體を以て殆に行ずと云々孝といふべし。又呂氏春秋に舟にして游せず。道にして徑せず。能支體を全ふして以て宗廟を守る孝といふべし。是皆門を出て路をゆくの間孝を忘れざるの戒にして。

新字:一道を行時は径によらずといへり。径は往還にはあらで近路也。是速ならんとを欲て私する所也。動時は必正を以てすべし。又径は人常に往還する処の正路にあ□□わき路なり。是を行時は【怪/惟】獣盗賊の恐れあり。こゝを以て身を慎む者は径に由ず。是君子は危によらざるの義なり。故に周礼に野の横行径踰を禁ずといふを以て知るべし。礼記に壱足を挙て敢て父母を忘れず。是故に道にして径せず舟にして游せず。敢て先父母の遺体を以て殆に行ずと云々孝といふべし。又呂氏春秋に舟にして游せず。道にして径せず。能支体を全ふして以て宗廟を守る孝といふべし。是皆門を出て路をゆくの間孝を忘れざるの戒にして。

書き下し

一道を行時は徑によらずといへり。徑は往還にはあらで近路也。是速ならんとを欲て私する所也。動時は必正を以てすべし。又徑は人常に往還する處の正路にあ□□わき路なり。是を行時は【怪/惟】獸盜賊の恐れあり。こゝを以て身を愼む者は徑に由ず。是君子は危によらざるの義なり。故に周禮に野の橫行徑踰を禁ずといふを以て知るべし。禮記に壹足を擧て敢て父母を忘れず。是故に道にして徑せず舟にして游せず。敢て先父母の遺體を以て殆に行ずと云々孝といふべし。又呂氏春秋に舟にして游せず。道にして徑せず。能支體を全ふして以て宗廟を守る孝といふべし。是皆門を出て路をゆくの間孝を忘れざるの戒にして。

現代語訳

「道を行く時は径によらず」といいます。径とは、人の往来する正式な道ではなく近道のことです。これは、早く行こうと思って私心でする所です。行動する時は、必ず正しい方法でしなさい。また径は、人が常に行き来する所にある正しい道ではなく、脇道です。これを行く時は、怪しい獣や盗賊の恐れがあります。ですから身を慎む者は、径によりません。これは、君子は危うきによらない、という意味です。ゆえに『周礼』に、野を横切り径を越えることを禁じるとあるのからも知れます。『礼記』に、「一足を挙げるにも、あえて父母を忘れず。このゆえに道では径を行かず、舟では泳がず。あえて父母の遺した身で、危うい行いをしない」とあります。これを孝というべきです。また『呂氏春秋』にも、「舟では泳がず、道では径を行かず。よく手足や体を全うして、宗廟を守る。これを孝というべきである」とあります。これらはみな、門を出て路を行く間も孝を忘れないための戒めであって、

解説

論語に由来する「径に由らず」を取り上げ、近道は私欲から出る行いであり、正しい大路を行くべきだと説きます。近道は獣や盗賊の危険も多く、君子は危うきに近づかないとし、『周礼』『礼記』『呂氏春秋』を引いて、父母から受けた身体を危うくしない孝の戒めに結びつけます。章句は途中で切れ、続きは次章に及びます。現代の組織でも、近道や抜け道に頼る不正や無理な省略は、結果として自他を危うくします。上に立つ者が正攻法を貫く姿勢を示すことが、部下の安全と信頼を守ります。

この章句が説くこと

径に由らず近道君子不危周礼礼記孝

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