武家家訓集 / 武田信繁家訓九十九箇条第97〜98条
一毎事不可油斷事、論語云、吾日三省吾身、 付縱雖在夫婦一所、聊不可忘刀事、云、殺人刀活人劔、又於風呂顏並兩手之垢不可執人事、又不斷不可燃挑燈事、 一毎事不可退屈事、孟子曰、駿々而不倦者、舜之徒也、
新字:一毎事不可油断事、論語云、吾日三省吾身、 付縦雖在夫婦一所、聊不可忘刀事、云、殺人刀活人剣、又於風呂顔並両手之垢不可執人事、又不断不可燃挑灯事、 一毎事不可退屈事、孟子曰、駿々而不倦者、舜之徒也、
書き下し
一、毎事油断すべからざる事。論語に云く、「吾日に三たび吾が身を省みる」と。 付けたり、縦い夫婦一所に在りと雖も、聊かも刀を忘るべからず。云く、「殺人刀、活人剣」と。又風呂に於いて、顔並びに両手の垢を人に執らすべからざる事。又断らずして挑灯を燃すべからざる事。 一、毎事退屈すべからざる事。孟子曰く、「駸駸として倦まざるは、舜の徒なり」と。
現代語訳
第一に、何事にも油断してはなりません。論語に「私は毎日、何度も自分の身を省みる」とあります。付け足しとして、たとえ夫婦が同じ場所にいても、少しも刀を忘れてはなりません。「人を殺す刀は、人を活かす剣」と云います。また、風呂では顔と両手の垢を人に取らせてはなりません。また、断りなく提灯をともしてはなりません。第二に、何事も、嫌気がさして投げ出してはなりません。孟子に「すばやく進んで倦まない者は、舜の仲間である」とあります。
解説
最初の条は、油断を戒め、毎日我が身を省みるという論語の句を据えます。付けたりでは、夫婦の間でも刀を忘れない、風呂では人に垢を取らせない、断りなく提灯をともさないなど、日常の細部に及ぶ注意を並べます。身近さの中ほど隙が生まれる、という教えでしょう。最後の条は、退屈せずに倦まず進めという心得で、孟子の句が励ましとなります。現代でも、日々の振り返りの習慣、気の置けない関係や自宅でこそ守る基本、そして長期の仕事で飽きや疲れに負けない姿勢は、継続して成果を出す人の共通項です。
この章句が説くこと
日々の省察油断継続日常の備え論語武家家訓集
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