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武家家訓集 / 武田信繁家訓九十九箇条第94〜96条

一內外之償、一方者以自力成、一方者可以知行調、兩方共以知行効者、必可爲不足事、古語云、善行者不擧雙足、又云、春色無高下、花枝自短長、 一縱雖爲多勢、備薄者可擊、又雖爲少衆、備厚者可思慮之事、兵書云、莫伐棠々陣、莫遮正々旗、伐之如卒然、卒然者、常山之蛇也、伐首則尾至、伐尾則首至、伐中則首尾共至、伐之有法、 一非儀兵而、以異體之形、不可起居動靜事、語云、君子不重則不威、

新字:一内外之償、一方者以自力成、一方者可以知行調、両方共以知行効者、必可為不足事、古語云、善行者不挙双足、又云、春色無高下、花枝自短長、 一縦雖為多勢、備薄者可撃、又雖為少衆、備厚者可思慮之事、兵書云、莫伐棠々陣、莫遮正々旗、伐之如卒然、卒然者、常山之蛇也、伐首則尾至、伐尾則首至、伐中則首尾共至、伐之有法、 一非儀兵而、以異体之形、不可起居動静事、語云、君子不重則不威、

書き下し

一、内外の償い、一方は自力を以て成し、一方は知行を以て調うべし、両方共に知行を以て効さば、必ず不足たるべき事。古語に云く、「善く行く者は双足を挙げず」。又云く、「春色に高下無く、花枝自ずから短長あり」と。 一、縦い多勢たりと雖も、備え薄き者は撃つべし、又少衆たりと雖も、備え厚き者は思慮すべきの事。兵書に云く、「棠棠たる陣を伐つ莫かれ、正正たる旗を遮る莫かれ。之を伐つこと卒然の如し、卒然とは常山の蛇なり。首を伐てば則ち尾至り、尾を伐てば則ち首至り、中を伐てば則ち首尾共に至る。之を伐つに法有り」と。 一、儀兵に非ずして、異体の形を以て起居動静すべからざる事。語に云く、「君子重からざれば則ち威あらず」と。

現代語訳

第一に、内と外の支出や償いは、一方は自力で賄い、もう一方は知行(領地からの収入)で整えるべきです。両方とも知行でまかなおうとすれば、必ず不足します。古語に「歩みの上手な者は、両足を同時には挙げない」とあり、また「春の景色に高い低いはないが、花の枝には自然と長短がある」とあります。第二に、たとえ大勢でも備えの薄い者は撃つべきであり、少人数でも備えの厚い者は慎重に考えるべきです。兵書に「整った陣を攻めるな、堂々とした旗を遮るな。攻めるにも、常山の蛇のようにする。首を打てば尾が来、尾を打てば首が来、中を打てば首尾ともに来る。攻めるには方法がある」とあります。第三に、儀礼の兵でないのに、ふだんと異なる格好で立ち居振る舞いをしてはなりません。「君子は重々しくなければ威厳がない」と云います。

解説

最初の条は、内外の出費の賄い方を説き、両方を知行に頼ると不足するという家計の知恵です。足を両方挙げない歩みや、花枝の長短の句が、無理のない配分を示唆します。二番目は、兵の数でなく備えの厚みで勝敗を見よという条で、常山の蛇の兵書が引かれ、首尾中が呼応する陣を攻める難しさを述べます。三番目は、身なりや所作が軽いと威厳を失うという条です。現代では、収入源の分散と予算配分、数字の大きさでなく準備の質で相手や競合を見ること、そして立ち居振る舞いや服装が組織の信頼に与える影響が参考になります。

この章句が説くこと

収支の配分備えの厚み常山の蛇威厳予算武家家訓集

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