武家家訓集 / 武田信繁家訓九十九箇条第1〜3条
一奉對屋形樣、盡未來不可有逆意事、論語曰、造次必於是、顚沛必於是、又曰事君能身、 一於戰場、聊不可爲未練事、吳子曰、必生則死、必死則生、 一無油斷行義可嗜事、史記曰、其身正則不令行、其身不正則雖令不從、
新字:一奉対屋形様、尽未来不可有逆意事、論語曰、造次必於是、顛沛必於是、又曰事君能身、 一於戦場、聊不可為未練事、呉子曰、必生則死、必死則生、 一無油断行義可嗜事、史記曰、其身正則不令行、其身不正則雖令不従、
書き下し
一、屋形樣に奉對し、未來を盡すとも逆意有るべからざる事。論語に曰く、造次にも必ず是に於いてし、顚沛にも必ず是に於いてす、と。又曰く、君に事へて能く身を、と。 一、戰場に於いて、聊かも未練の事を爲すべからず。吳子に曰く、必生なれば則ち死し、必死なれば則ち生く、と。 一、油斷無く行義嗜むべき事。史記に曰く、其の身正しければ則ち令せずして行はれ、其の身正しからざれば則ち令すと雖も從はず、と。
現代語訳
一、お屋形様(主君)に対しては、未来永劫にわたって逆らう心を持ってはなりません。『論語』に「あわただしい時にも必ずここに身を置き、つまずき倒れる時にも必ずここに身を置く」とあり、また「君に仕えては、よくその身を……」ともあります。一、戦場では、少しも未練な振る舞いをしてはなりません。『呉子』に「必ず生きようとすれば死に、必ず死ぬ覚悟であれば生きる」とあります。一、油断なく、行いと義を心がけることです。『史記』に「自分の身が正しければ命令しなくても行われ、自分の身が正しくなければ命令しても従われない」とあります。
解説
九十九箇条の最初の三条で、主君への忠、戦場での覚悟、日ごろの行義が並びます。論語の句で忠を揺るがぬ姿勢として示し、呉子の句で覚悟が生死を分けると説き、史記の句で上に立つ者が自ら正しければ令は行われると結んでいます。論語の引用は「君に事へて能く身を」で切れており、底本のままです。現代の組織でも、方針への忠実さ、土壇場での腹の据え方、リーダー自身の言行一致が信頼の土台になるという読み方ができます。信頼は小さな約束の積み重ねから生まれます。
この章句が説くこと
忠義覚悟言行一致リーダーシップ行義武家家訓集
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