武家家訓集 / 武田信繁家訓九十九箇条第67〜69条
一不可侫人之心持事、軍識曰、侫人在上、一軍皆訟、 一召之時、少不可遲參之事、語云、君命召、則不俟駕行、 一武略其外隱密之義、不可他言事、易云、其機不密、則成害、史記云、事以密成、語以泄敗、
新字:一不可侫人之心持事、軍識曰、侫人在上、一軍皆訟、 一召之時、少不可遅参之事、語云、君命召、則不俟駕行、 一武略其外隠密之義、不可他言事、易云、其機不密、則成害、史記云、事以密成、語以泄敗、
書き下し
一、佞人の心を持つべからざる事。軍識に曰く、「佞人上に在れば、一軍皆訟す」と。 一、召さるる時、少しも遅参すべからざるの事。語に云く、「君命じて召せば、則ち駕を俟たずして行く」と。 一、武略其の外隠密の義、他言すべからざる事。易に云く、「其の機密ならざれば、則ち害を成す」。史記に云く、「事は密を以て成り、語は泄るるを以て敗る」と。
現代語訳
第一に、おもねり諂う心を持ってはなりません。軍識に「口先巧みな者が上に立てば、軍全体が争い合う」とあります。第二に、お召しがあったときは、少しも遅参してはなりません。論語に「主君が命じて呼ばれれば、馬車の支度を待たずに歩いて行く」とあります。第三に、軍略やそのほか内密にすべきことは、他人に話してはなりません。易に「その機が秘密でなければ、害となる」とあり、史記に「事は秘密にしてこそ成り、話は漏れることで失敗する」とあります。
解説
最初の条は、へつらいの心を持つなという戒めです。軍識の句は、おもねる者が上に立つと全軍が争いに沈む、と組織全体への影響を示します。二番目は、呼ばれたら遅れず駆けつけよという条で、論語の「駕を俟たずして行く」が迅速さの象徴です。三番目は、軍略や内密の事柄を他言するなという条で、易と史記の句を重ねて、機密の漏れが失敗を招くと示します。現代では、イエスマンを重用する危うさ、上司や取引先の呼び出しへの即応、そして経営情報や人事情報の守秘義務が、そのまま日々の判断基準になります。
この章句が説くこと
追従を戒める即応機密保持易経情報管理武家家訓集
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