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武家家訓集 / 武田信繁家訓九十九箇条第70〜72条

一夫凡可加情事、尚書云、德惟善政、政在養民、 一佛神可信事、云、佛心叶則、時々添力、以橫心勝人則、可露而亡、傳云、神者不享非禮、 一味方及敗軍者、一入可捐事、穀梁傳云、善陣者不戰、善戰者不死、

新字:一夫凡可加情事、尚書云、徳惟善政、政在養民、 一仏神可信事、云、仏心叶則、時々添力、以横心勝人則、可露而亡、伝云、神者不享非礼、 一味方及敗軍者、一入可捐事、穀梁伝云、善陣者不戦、善戦者不死、

書き下し

一、夫れ凡そ情を加うべき事。尚書に云く、「徳は惟れ善政、政は民を養うに在り」と。 一、仏神信ずべき事。云く、「仏心に叶えば、時々力を添え、横心を以て人に勝てば、露われて亡ぶべし」と。伝に云く、「神は非礼を享けず」と。 一、味方敗軍に及ばば、一入捐つべき事。穀梁伝に云く、「善く陣する者は戦わず、善く戦う者は死せず」と。

現代語訳

第一に、およそ情けをかけるべきです。尚書に「徳とはよい政治のことであり、政治とは民を養うことにある」とあります。第二に、仏や神は信ずるべきです。仏の心にかなえばときどき力を添えてくれ、よこしまな心で人に勝てば、いずれ露われて滅びるでしょう。伝に「神は非礼の供え物を受けない」とあります。第三に、味方が敗走する事態に及んだときは、一入に(とりわけ)身を捨てて当たるべきです(この条は語の読みに推測を含みます)。穀梁伝に「陣立ての上手な者は戦わず、戦の上手な者は死なない」とあります。

解説

最初の条は、情けをかける政治を説き、尚書の「政は民を養うに在り」を根拠にします。二番目は、信仰を持てという条ですが、仏神の加護は正しい心に応じるもので、よこしまな勝ちは露われて亡びる、と倫理の側に引き寄せています。三番目は、味方が敗れたときに身を捨てて当たれという覚悟を述べ、穀梁伝の句を添えます。ただし句の読みは確かでありません。現代の組織では、人を養う視点を欠いた施策は長持ちしないこと、不正な勝ちは後で露見すること、危機の局面こそ管理職が前に立つ姿勢が問われることに通じます。

この章句が説くこと

民を養う倫理神仏危機対応尚書武家家訓集

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