武家家訓集 / 武田信繁家訓九十九箇条第49〜51条
一於敵陣擊不虛時、閣本道求格外道路而可擬事、語云、明修棧道、暗渡陣蒼、 一大方之義、人尋候共不知之趣、挨拶無難事歟、語云、好事不若無、 一家來之者、雖一旦誤候、糺明而後就于直覺悟者、隨夫可悔返事、語曰、勇潔以進、與其潔、不咎往事、
新字:一於敵陣撃不虚時、閣本道求格外道路而可擬事、語云、明修棧道、暗渡陣蒼、 一大方之義、人尋候共不知之趣、挨拶無難事歟、語云、好事不若無、 一家来之者、雖一旦誤候、糺明而後就于直覚悟者、随夫可悔返事、語曰、勇潔以進、与其潔、不咎往事、
書き下し
一、敵陣に於いて擊つこと虛しからざる時、本道を閣き格外の道路を求めて擬すべき事。語に云ふ、明らかに棧道を修め、暗に陣蒼を渡る、と。 一、大方の義、人尋ね候へども知らざる趣、挨拶無難の事か。語に云ふ、好事は無きに若かず、と。 一、家來の者、一旦誤り候ふと雖も、糺明して後直ちに覺悟に就かば、夫れに隨ひて悔い返すべき事。語に曰く、勇潔にして以て進む、其の潔きを與す、往事を咎めず、と。
現代語訳
一、敵陣を撃つのが無駄にならないときは、本道を置いて、格外の道(意表を突く道)を求めてねらうべきです。「明らかに桟道を修理して、ひそかに陳倉を渡る」といいます。一、大方の事柄については、人が尋ねてきても知らないという態度で、無難に挨拶するのがよいでしょう。「好事は無いにしかず」といいます。一、家来が一度誤ったとしても、糺明したうえで直ちに悟ったならば、それに従って悔い返すべきです。「勇敢に潔く進むなら、その潔さを認め、過去のことは咎めない」といいます。
解説
奇策の用い方、余計なことを言わない、過ちを改めた部下を許すことの三条です。奇策の条は、本道を閉ざして意表の道を取ることを勧め、桟道を整えて陳倉を渡る故事を思わせる句を引きます。尋ねられても無難に答えるという条は、不用意に話さない配慮です。過ちの条は、糺明のあとで改めた者を、往事を咎めず受け入れよと説きます。現代では、正面突破だけでなく別の道を考える、軽率に話さない、過ちを認めた人にやり直しの機会を与える、という実務に読み替えられます。
この章句が説くこと
奇策やり直し過去を咎めない慎重部下の失敗武家家訓集
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