武家家訓集 / 武田信繁家訓九十九箇条第28〜30条
一雖爲深知晉於人前不可妄雜談事、語云、三思一言、九思一行、 一參禪可嗜事、語曰、參禪別無秘決、唯思生死切、 一何時歸宿之時者、先江可遣使者、自然留守番衆行儀等油斷之砌、折檻難閣、又以細事礼明者、無際限歟、云、不敎而殺云、逆、
新字:一雖為深知晋於人前不可妄雑談事、語云、三思一言、九思一行、 一参禅可嗜事、語曰、参禅別無秘決、唯思生死切、 一何時帰宿之時者、先江可遣使者、自然留守番衆行儀等油断之砌、折檻難閣、又以細事礼明者、無際限歟、云、不教而殺云、逆、
書き下し
一、深く知晉たりと雖も、人前に於いて妄りに雜談すべからざる事。語に云ふ、三たび思ひて一たび言ひ、九たび思ひて一たび行ふ、と。 一、參禪嗜むべき事。語に曰く、參禪に別に秘決無し、唯だ生死を思ふこと切なり、と。 一、何れの時にも歸宿の時は、先へ使者を遣はすべし。自然留守番衆の行儀等油斷の砌、折檻閣き難く、又細事を以て礼明すれば、際限無からんか。云ふ、敎へずして殺す、之を逆と云ふ、と。
現代語訳
一、たとえ深く知り合った間柄でも、人前でむやみに雑談してはなりません。「三度考えて一度言い、九度考えて一度行う」といいます。一、禅に参じることを心がけるべきです。「参禅に特別な秘訣はない。ただ生死を思うことが切実であるだけだ」といいます。一、いつでも帰って宿に着くときは、先に使者を遣わすべきです。留守番の者たちの行儀などが油断していたとき、折檻を見過ごしにくくなりますし、また細事を糺明すれば際限がなくなるからでしょう。「教えずに殺すことを、逆という」といいます。
解説
雑談の慎み、参禅、帰宅の前触れの三条です。三思して一言という句は、言葉と行いの慎重さを求めます。参禅の条は、秘訣などなく、生死を切実に思うことだけだと言います。帰宿前に使者を出す条は、留守番の気の緩みを折檻せざるを得ない状況に追い込まないための配慮で、教えずに罰するのは逆だという句で結びます。現代でも、訪問や点検の前触れを出して準備の時間を与え、教えたうえで評価するという公正さが、組織の信頼を守ります。言葉を慎むことは、信頼を守る第一歩でもあります。
この章句が説くこと
慎重参禅生死教えずに罰しない抜き打ち武家家訓集
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