武家家訓集 / 武田信繁家訓九十九箇条第37〜39条
一人召使機、依其器量、用所可申付事、古語云、良匠不捨材、上將不棄士、 一武具無懈怠可誘事、語云、九層之臺、起於累土、 一出陣之砌、一日不可殘大將之跡事、語云、聞鐘聲憂、聞鼓聲嘉、
新字:一人召使機、依其器量、用所可申付事、古語云、良匠不捨材、上将不棄士、 一武具無懈怠可誘事、語云、九層之台、起於累土、 一出陣之砌、一日不可残大将之跡事、語云、聞鐘声憂、聞鼓声嘉、
書き下し
一、人召し使ふ機、其の器量に依りて、用ふる所を申し付くべき事。古語に云ふ、良匠は材を捨てず、上將は士を棄てず、と。 一、武具懈怠無く誘ふべき事。語に云ふ、九層の臺は累土より起こる、と。 一、出陣の砌、一日も大將の跡に殘るべからざる事。語に云ふ、鐘聲を聞けば憂へ、鼓聲を聞けば嘉す、と。
現代語訳
一、人を召し使うときは、その器量に応じて、用いる場を申し付けるべきです。古語に「良い匠は材を捨てず、上等の将は士を見捨てない」とあります。一、武具を、怠りなく「誘」(意味が取りにくい字です)ことです。「九層の高殿も、積み上げた土から起こる」といいます。一、出陣のときは、一日でも大将の後に残ってはなりません。「鐘の音を聞けば憂い、鼓の音を聞けば喜ぶ」といいます。
解説
適材適所、武具の備え、出陣時の遅れの戒めです。良匠は材を捨てないという句は、器量に応じて使い道を割り当てよという意味で、人事の基本を述べています。武具の条は、九層の高殿も積土から始まるという句で、日ごろの備えの積み重ねを説きます。出陣の条は、一日も大将の後に残るなと戒めます。現代の組織でも、人材を役割に合わせて活かす、備えを日々積み上げる、出遅れずに合流するという三つが重要です。底本の「誘」の字は読みが仮です。
この章句が説くこと
適材適所備え積み重ね人事出陣武家家訓集
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