武家家訓集 / 武田信繁家訓九十九箇条第40〜42条
一可入馬精事、論語云、犬以守禦、馬以代勞、能養人者也、 一敵味方打向時、未定備處可擊事、語云、能勝敵者無形勝、又曰、慕而家風不容擬議、 一軍之時不可遠懸事、司馬法曰、逐奔不踰列、是以不亂軍旅固、不失行列之政、不施人馬之力、
新字:一可入馬精事、論語云、犬以守禦、馬以代労、能養人者也、 一敵味方打向時、未定備処可撃事、語云、能勝敵者無形勝、又曰、慕而家風不容擬議、 一軍之時不可遠懸事、司馬法曰、逐奔不踰列、是以不乱軍旅固、不失行列之政、不施人馬之力、
書き下し
一、馬の精を入るべき事。論語に云ふ、犬は以て守禦し、馬は以て勞に代はる、能く人を養ふ者なり、と。 一、敵味方打ち向かふ時、未だ定まらざる備への處を擊つべき事。語に云ふ、能く敵に勝つ者は無形に勝つ、と。又曰く、慕ひて家風は擬議を容れず、と。 一、軍の時遠懸すべからざる事。司馬法に曰く、奔を逐ふこと列を踰えず、是を以て軍旅を亂さず固く、行列の政を失はず、人馬の力を施さず、と。
現代語訳
一、馬に精を入れることです。「犬は守り防ぎ、馬は労に代わる、よく人を養うものである」といいます。一、敵味方が向かい合う時は、敵のまだ定まっていない備えのところを撃つべきです。「よく敵に勝つ者は、形のないものに勝つ」といいます。また「慕って、家風は議論を許さない」ともいいます。一、戦のとき、遠くまで追いかけてはなりません。『司馬法』に「逃げる者を追うのに列を越えない。こうして軍の隊列を乱さず堅固に保ち、行列の秩序を失わず、人馬の力を使い果たさない」とあります。
解説
馬の世話、敵の備えの隙を突くこと、深追いをしないことの三条です。馬を犬と並べ、人を養うものとする句は、道具や動物の世話を軽んじるなと戒めます。敵の備えの定まらないところを撃て、という条は、先手を取って形のない勝ちを狙う発想です。深追いの条は、司馬法の句で、逃げる敵を追っても列を乱さず、人馬の力を使い果たすなと説きます。現代の仕事でも、設備や道具の手入れ、競合の隙を突く機動力、好機に深追いして体力を失わない判断が参考になります。
この章句が説くこと
深追い準備機動力隙道具の手入れ武家家訓集
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